ラバー・ダック

安良巻祐介

 

 背中に小さな推進機構を取り付けられたゴムのアヒルのおもちゃが、濁った暗い海原を、思ったよりも軽快な速度で横断してゆく。

 全ての生き物は死に絶えた。

 腐った海だけが世界に残った。

 その海の上を、アヒルは素晴らしく清々しい速度で進む。

 推進機構の形は百年ほど前に壊れたスクリュウ、その名前は「希望」であった。

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ラバー・ダック 安良巻祐介 @aramaki88

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