「あー、いるいるこんなひと」
始まりはそんな感想でした。
シンユウを連呼する友達ほど信用できないのは知っての通り。
自分ならその自称シンユウから少しずつ離れていくだろうなぁと思う反面、この物語の主人公は大胆な一歩を踏み出します。
確かにこの方法は効果的だなぁと感じますが、その方法を取るには、本当に大事に思っていないと取れない行動だと思います。
そんなにいい子じゃないというのが主人公の口癖でしたが、作中のTくんと同じように、この主人公の根は本当に「いい子」だと感じました。
個人的には、心温まる、感動する話ではなかったですが、何かに対して「一歩踏み出すこと」の大切さを改めて教えてもらえるような物語でした。
まさに今、この現代社会に生きる人間だから書けたといえる傑作です。
プリズムのタイトル通り、まさに多面体的な個性をもつ主人公はしたたかで魅力的。自称毒舌の親友より、はるかに主人公の方が捻くれた性格をしていますが、そこもまた主人公の存在感を際立たせていました。親友の子よりも、主人公の方が実際身近にいたら怖いですね笑。
メッセージ性も非常に強いですが、シンプルで分かりやすく、胸にガツンとくる感じ。主題をストーリーラインに乗せるのが抜群に上手い作者様だなと感じました。
メインキャラクターが三人しかいないのも、三稜鏡(プリズム)を思わせる配慮で、考え込まれているなといった印象です。
このSNS時代を生きる今、ぜひ読んで欲しい作品です。本当に面白かったです。