マッチ売りの少女

少女は寒い中タバコを吹かせながら歩いていた。父親の待つ地獄の家へ今日も売れなかった。マッチが入ったカゴをいつもより重く感じながらさっきの人のことを思い出していた。いつも自分のことを憐れむわけでもなく汚いものを見る訳でもなくただただ、不思議そうに私を見るその人の目が私もなぜ自分がマッチなんかを売りに練り歩いてるのかを考えさせられていた。

「わっ!…」

考えながら下を向き歩いていたから、馬車が通るのに気がつかなかった。向こうから、轢き殺されたいのか!という怒声が聞こえた。この際、その方がいいのかもと思ってしまっていた。向こうも私なんかを馬でひいたとしても、何ら思いはしないのだから。

さっきの馬車に引かれそうになったひょうしに転んでしまい靴が無くなっているのに気がついた。きょろきょろとあちこちを探してもどこにも靴はなく、仕方なく裸足でまた家まで歩くことにした。さっきのひょうしにタバコの火も消え、吸っていたタバコを捨て新しいのにマッチで火を付け歩き出した。口から出る煙、苦い味、余り好きではない。でも、気分を紛らわせるのにはいいもので、たまに父親からくすねてる。


苦く苦しい私の人生、

「ただいま…」

小さく弱々しい声、お父さんがいるとなにされるかわからないからだ…

返事が返ってこないということは多分寝てるかお酒飲みに行ってるんだろうな

玄関で雪を払い2階にある自分の部屋に戻る。部屋は真っ暗、奥に行くとランプの火をつけ少し周りが明るくなる。子供達の間で流行ってる棒を使う遊び道具に釘を刺すのにハマっている。後はいくつか刺すだけ。近くにある金鎚を持ち打ち付けていく。この感覚が好き。

ギィイイイ…

下の扉の開く音。急いでランプの火を消し物陰に隠れる。口を手で覆い。息を潜める。

聞こえてくる。怒声。お父さんが帰ってきたそれだけで体は恐怖に押しつぶされてしまいそうな感覚に襲われる。

「おい!!クソ娘!!!いんのはわかってんだよ!!!出てこい!!」

体が震えるのを抑え必死に歯をくいしばる。

助けてと誰かに求めることも出来ない。

ゆっくりゆっくり階段を登る音。

なんでだろ、なんで、さっきの変な人の事思い出すんだろ。なんでだろ、あの人なら助けてくれるて思っちゃうのかな、そんなわけないのに…

毎日、この近づく足音に怯え

そして、廊下を歩く音。

ギィイイイ…

「おーい、いんのはわかってるつってるだろー殺されてぇーのかー」

嫌な声が近づくとどんどん体の震えも酷くなっていく。

体になにか当たったと思い足元を見ると釘をうちつけていた。木の棒が転がってきた。まるで、これでお父さんを殺せといっているかのように…

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変わったマッチ売りの少女と共に @nijiho0140

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