愛とはなんですか。

ハルマキ

ボクの好きな人

清らかに流れる水の音。

太陽に照らされ、一際輝く花たち。


そしてそれを眺める横顔。

ボクは道沿いに立つ大きな木の下で一眼を構えた。

カシャ、と音が聞こえ、流れる川と美しい横顔が液晶に映し出される。

思わず頬が緩んだと同時に、川を眺めていたがこちらを向いた。


「……っ!」


「あれ、何してんの? 春樹」


うわぁ、こっち見た!

慌てて目を逸らしたのも束の間、紅潮していく頬を隠しきれず木に頭突きをする。


「おいおい、なんでそこで頭突きしてるんだ」


「わぁぁ、こっち来んなよ! た、辰巳たつみこそ何してたの!」


「家帰るのも面倒だったから、ぼんやりしてただけだよ」


ミルクティのような淡い茶髪に切れ長の二重まぶた。

絵に描いたような男前の辰巳は身長もボクより10センチ近く高い。

爽やかな笑顔でこちらへ向かってくる男に心をざわつかせるボクは、無意識にカメラのシャッターを切った。


「あ」


「盗撮禁止なー」


「盗撮じゃないよ! 辰巳、こっち見てるし!」


「ははは、何そんな慌ててんの」


キミの格好良さに惹かれてる。

なんて、言えるわけがない。

ボクと辰巳は高校時代からの付き合いで、現在4年目になる。

偶然か必然か、辰巳と同じ大学に現役合格を果たしたのは紛れもなくボクの追跡ついせきによるものだ。

本人は、気付きもしていないだろうけど。


そもそもボクはゲイじゃない。

一目惚れしたわけでもなく、高校生活を共にするうちに惹かれてしまっていたのだ。

と言うのも、辰巳は友人がたくさんいるのに地味で目立たないボクにも平等に接してくれた。

そしていつしか登下校も休憩時間もボクの元へやって来るようになっていて、それが現在まで続いている。


本当に変わった奴だと思う。ボクもだが。


「春樹、これやるよ」


「? なに?」


大学生活も2年目を迎えたボクらを歓迎しているのか、優しく桜が舞ってくる。

隣を歩く辰巳にドキドキと心臓を揺らしながら、カバンから何を取り出すのか妄想して緊張した。


「はい、これ」


「え、御守り?」


「そうそう。昨日山下ん所の神社で貰ったんだ」


「ちょっと待って。山下に貰ったならボクにあげちゃダメだろ」


慌てて手を握り御守りを受け取らなかった。

すると辰巳はフフンと鼻を鳴らし、ポケットからお揃いの御守りを取り出した。


「春樹の分も、って貰ったんだよ。ほら、丁度"健康御守けんこうおまもり"って書いてるし」


「何歳だよ、ボクら……」


「良いじゃん。春樹は他の奴と比べて身体弱いんだし、無理すんなって事だよ」


「…………」


神様がもしもいるのなら、本当にタチが悪い。

こんなの、余計に好きになってしまうだろう。

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愛とはなんですか。 ハルマキ @kureo13shino

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