2013年【行人】全ては偶然で、僕はそれに意味を見出している。
近所のスーパーで買い物をしようと道を歩いていた時に名前を呼ばれた。
そちらの方を見ると懐かしい顔があった。
「久しぶり」
「久しぶり、陽子」
僕と秋穂の同級生、安藤陽子は髪を明るく染めていた。
服は赤のチェック柄のワンピースで、真ん中に白いボタンが並んでいて、上のボタンを外したら胸元が見えそうだった。
更に、スカート丈も短く太ももが見えて、健康的な足が惜しみなくさらされていた。
僕の中で陽子は優等生という印象がある為か違和感があった。
しかし、そういう印象を脇に寄せれば、とても可愛い目を引く女の子に陽子は成長していた。
「聞いたよ。行人、秋穂と一緒に住んでいるんだって?」
陽子の手にはコンビニの袋が握られていて、中にはジュースやお菓子が入っていた。
休暇中の女子大生は暇なようだ。
「有難いことにね」
「上手いことやったね!」
「そーいうもん?」
「だって、行人。ずっと秋穂のこと好きだったでしょ?」
ふむ。
離れていた時期があるだけで、嫌いだったことはない。
けれど、まともに答えてもからかいの対象になると思い、早々に話題を変えた。
「陽子、その恰好はエロいわ。なに、彼氏に買ってもらったの?」
「は? 彼氏じゃなく、先輩のお下がり」
「そーいうところは、変わってないのね。陽子さん」
「勿体ないじゃん?」
陽子は長女の為か、普段ほとんど家に親のいない環境で育った為か、
どこかお得とか勿体ないといった考えで物事を選ぶところがあった。
それは進学して、一人暮らしをはじめても変わっていないようだった。
「ちなみに、髪を染めた理由は?」
「美容室のクーポンが溜まったから」
「分かりやすいことで」
それから僕達は近くの公園を歩きながら、互いの近状報告をし合った。
ふと、話が途切れた時だった。
「行人。あんた、中学三年の頃のことどれくらい覚えてる?」
「どうして?」
「同窓会あるじゃない? 行くから、その時の話題作りに」
「なるほど」
正直に言えば、僕はまたかと思った。
ここ数日、僕は中谷優子、川島疾風、兄貴を探しながら、
十五歳の僕に付き纏われているような気持ちになっていた。
朝子の命日だった。
中学三年の同窓会の案内があった。
ミヤの姉の美紀さんが岩田屋町に戻っていた。
いろんな要素が十五歳の僕を作ろうとしていた。
無意味なものに意味を見出そうとする。
それがオカルトだと中谷家の隣人は言った。
全ては偶然にもかかわらず、僕はそれに意味を見出そうとしているのかも知れない。
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