作者である零真似さんの本が読みたくなる、そんな物語。
今、そういう作家さんがどれくらいいるのか分からないけれど、作家さんの中には、自分自身を削り出した欠片を絵具に変えて物語を刻んでいるような、そういう人たちがいる。零真似さんはそういう人なんだろうと思わせる、そんな物語。
不治の病マーメイドシックに冒された少女と、人生に意味を見い出せずミュージアムに引き籠った少年。二人が出会い、語り、笑い、悩み、ぶつかり、そして、見つけ、水泡にキスを迎える物語。ある意味、この手の物語では王道、と呼べるような展開ではあるかもしれない。後半、少々語り足りていない部分や、荒さの目立つところも、あるのかもしれない。
でも、大事な所はそんなんじゃなくて、例えば、彼らの一言一言、その表情、息遣い、迷い、怒り、どうしようもない、やるせなさ。
その中で見せる、かすかな輝き。
大事なのは、物語に暮らす彼ら、生きているということ。
そんな彼らが問いかける。生きるって、幸せって、何なんだって。
読んでいる僕たちに問いかける。
僕は、自分自身が生きることに向いていないと思って生きている。
儚さの好きな僕たちは、本質的に生きることが苦手なのだと思う。
でも、彼らは僕に生きろと言いました。
貴方には、何と聞こえますか。