十六、エルレウスの終点
◇◇◇
ふしぎなさいばんをする場所で、あたしたちは、ふわふわと浮いています。
『エルレウス、君の願いを叶えよう』
そう言って、ステラミラさんは、キラキラ光る、取り出した右の目をさし出します。
「青く蒼く光る鉱石、あらゆる結晶、宝石の煌めき、空と海の青そのもの、角度を変えて瞬く星々、清かな月明かり、水の調べ、どうしても手に入れたいなにかを形にしたもの……」
エルレウスさんがささやくこえが聞こえます。
ステラミラさんは、宝石のような目を、エルレウスさんに向けました。
ふぅらるう。
ステラミラさんの目の中に、エルレウスさんがとじこめられました。
◆◆◆
ーーああ……安心する。
もう、安全だ。誰にも脅かされず、胎児のように丸まって、たゆたっていればいい。
目映く、眩く、輝く結晶の中、琥珀に眠る虫のように、化石になってしまおう。
そう、自分は思い、ゆっくり目を閉じていった……。
ずっと、ずっと、回帰する記憶の中にーー。
◇◇◇
……ずっと、違和感がありました。
這い回る蟻の感触がなくなった、この空間。
想像の力で、空が飛べる。魔法とは、違うのでしょうか?
こちらの僕のカラダは、仮のカラダ。
では、元の僕のカラダは?
生き返ることもできるなら、カラダは今、どこにある?
◇◇◇
エルレウスさんが、ステラミラさんの目に閉じ込められーーなのに、あたしはちがうものを見ていた。
半とうめいのドームみたいな、うすいまくに包まれて、たくさんのきかいに囲まれた、エルレウスさん。
お医者さんがいる。
あれは、酸素のきかい?
エルレウスさんの側で、じっと見つめている女の人は、エルレウスさんの、お母さん?
そしてここは、トーワン大学病院?
たくさんの人が動いている。
ざわめく中、ピッピッと動くきかいたち。
「火星てきごう者が、三人なんて……。」
だれかのつぶやきが、ふっと聞こえた。
ガラスドームの標本たち 黒イ卵 @kuroitamago
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