鯖が回る
殴られたすぐ後のこと俺は、聞き忘れていたことを咲良に質問した。
「なぁー咲良なんで、鯖食ってたの?」
「それはね、智行くん」
いきなりくん呼びになったな! と心の中でツッコミながら話を聞く。
「朝のニュースの占いで、通学路で鯖を食べれば、あなたの好きな人もイチコロって言ってたからなんですよ!」
咲良は自慢気にそう言った、俺は少し気になった箇所を咲良に質問していく。
「ちなみにそれ、なんていうニュース番組?」
そう聞くと咲良は少し考えたが、すぐに答えた。
「たしかー、嘘しか言わないニュースって番組」
絶対、鯖の話嘘じゃん、でももし俺が咲良の立場だったら信じ込んでたかも、そう思えるくらい俺と咲良はバカなのだ。
そんなことを考えていると咲良が喋りだした。
「でも一週間前に始まったその番組、今日で最終回になっちゃったんだよね、悲し」
一週間で切られるニュース番組って、逆に気になってくるレベルで、やばそうな番組な気がする。
もう一つ気になっていたことを聞いてみる、ここで俺は咲良に質問しなければよかったなと思うかもしれなかった。
「咲良お前好きな人いるってことだよね? 鯖の話的に」
そう言い終えたタイミングで、咲良をみてみると顔を赤らめ左手を半開きにして、右手を左手の上で円状に回している咲良の姿があった。
両手の間を鯖が何匹も泳いでいる、その泳いでいる鯖はだんだんとまとまっていき、ついには鯖になったような気がした。
すると咲良は右手を止め、一瞬左手を見ながらこちらに走ってきている。
「
そう叫びながら俺の腹に左手を当てた、もちろん幻想なので痛くはないが、ここはノリで吹っ飛んでみる。
「それも昨日俺の家で読んだやつじゃねーか」
そのまま俺は倒れこんだ、先ほどみたいに咲良が歩み寄ってくれると思っていたのだが、なかなかこないなー、ちょっと覗いてみるかと覗くと咲良はそっぽを向いてしまった。
明らかに怒っていた、普段全く怒らない人が怒るとここまで心配になるものなんだなーと考えながら、素早く起き上がり咲良に詰め寄っていく。
「どうして怒ってるの?」
すると咲良はそっぽを向いたまま「なんでもない」とだけ言って足早に歩いていってしまう。
俺もそれを追いかけるように歩いていく。
どれだけ追いかけても届かないそんなことような気がした。
俺は勢いに任せて朝の通学路で叫んだ。
「咲良ー! 俺お前のことが好きだー!」
「やっと言える」
咲良は小声で何か呟くとすぐに叫びかえしてくる。
「私も! 智行のことが好きー!」
足を止めている咲良のところに足早に歩いていく。
咲良の前で足を止め、咲良を抱きしめる、するとそれを見ていたのかすぐ近くの家の中から。
「リア充バクハツしろーーーー!」
というなんともタイミングが悪い叫びが聞こえてきた。
俺はその叫びが聞こえたタイミングで、咲良の手を引っ張り走っていく。
バカ同士の恋愛事情 tada @MOKU0529
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