蛇骨灘

安良巻祐介

 

 その海域へ舟を漕ぎだした漁師は小さな呪いを受けて帰るという。

 けれど魚がよく獲れるものだから、昔は特に禁忌を侵して舟を出す者が絶えなかった。

 身に少しずつ鱗を生じるその呪いを彼らは魚の皮と呼んで無理やり勲章としようともしたが、実際のところそれが魚の鱗ではなく総身をくねらす巨大な蛇の鱗の写しであることは、灘の名前と、呪いを受けた者の晩年が萎えて短くなり果てた手足で床から起きられずに畳を這いまわる姿で終わるというところから見ても、やはり明らかなのであった。

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蛇骨灘 安良巻祐介 @aramaki88

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