◆第33話◆「なんだかなぁ、こんな方法が……(前編)」

 そして、現在のビィト達は悪鬼の牙城の地下にいた。

 ここはかつて、「豹の槍パンターランツァ」が悪鬼の牙城探索中に見つけた通路のひとつ。

 主な用途は深層へ向かう近道として。、

 難易度は高いが、そこそこのランクのパーティなら使える抜け道として活用されていたものの一つだった。


 この先にはアンデッドが沸く区画や無機物のモンスターなどがうろつく階層が続くので、物資の補給には向いていないが、それを看過できるだけの物資を持ち込みさえすれば深層までの道のりをかなり短縮できる非常に便利な通路であった。


 「豹の槍パンターランツァ」も度々利用していたし、稀に他のパーティが使うこともある。


 そして、ギルドには報告済みなので、既に知れわたった事実なので、コソコソ隠れて利用する必要もない。


 ついでに言えば、「鉄の拳アイアンフィスト」どもが悪鬼の牙城への通路を塞いでいるので、この先には誰もいないのは織り込み済み。


 だからできる。

 こんな無茶な真似が……。


「どうだ?」


 ジェイクがオーガどもの奇襲を警戒しつつ、ビィトの様子を確かめている。


 ビィトは悪鬼の牙城の、地下へ地下へと続く通路を確認しており、その先には間違いなく別の派生ダンジョンへ続く長い回廊が延々と伸びていた。

 そして、その通路をつくる壁にビィトは張り付いていと。


「うん…………。かなりの厚みがありそうだけど、やっぱりこれ、人工物だね」


 ビィトがパンパンと叩く通路の壁。

 巨大な石のブロックを積み上げたもので、その先は地底湖まで続くはず。


「なら、岩盤をくりぬいたものじゃないということだな? じゃぁ、どこかに隙間があるはずだ」

「どうだろう? かなり精巧な作りだぞ。剃刀すら入りそうにない」


 相当に高度な技術で作られているらしく、石のブロックはピッタリとくっ付いている。

 だけど、破壊そのものは不可能じゃなさそうだ。


「なら、やれ」

「おう。───かなり、うるさくなるぞ?」


 ビィトは目星をつけた石のブロックに狙いをつける。


「構うものか。派手に行け! ここは一本道だ。リスティの結界と、俺の攻勢を交互でやればそう難しくはない。それよりも……、」


「コチラはお任せください」

「準備万端だよ!」


 リズとエミリィは力強く頷く。

 彼女らは何やら作業をしており、見れば地下階層の天井に張り巡らされた梁にロープを固定している。


「よし、行けるな。……恐らく、来るとき・・・・は一気に来るからな。お前たちの速度が肝心だ───ぬかるなよ」


 ジェイクの厳しい目つき。

 それをものともせず二人は首肯した。


「はい!」

「はーい!」


 さぁ、ここからは俺の出番だ───。


「ビィト! やれッ!!」

「おう!!」


 ペタリと石壁に張り付いたビィト。


 おおよそ、鍵から発せられた光を辿ればこの位置からほぼ真っ直ぐに伸びている。

 つまり、石壁を挟んだ向こう───城の基部を挟んだ地底湖の先に魔法陣はあるのだろう。


 目算でしかないが、かなり深い位地……。


 今ビィト達は城の地下で、壁を挟んで水面下にいるのだ。

 そして、リスティの提案した破天荒な作戦とは───。


「まずはここ!!」


 超高圧縮ハイパーバイブロ水矢ウォーターアロー!!


 ドシュゥゥゥウ!!


 ゼロ距離で放たれた水矢が石壁に穴をあけていく。


 だが、水矢の威力は協力極まりないが、距離によって減衰するため穴をあける長さには限りがある。


 さすがに石壁を貫通するには至らなかったがそうれでも相当深い穴が開いた。


「よし、次!!」


 そして、次々に穴をあけていく。

 たかが下級魔法の応用なのでいくらでも穴をあけることができるのは強みだろう。


 そうして、作業を続けるうちに無数の穴が開く。


「ジェイク、会敵準備! 発破する」

「よし、やれ!」



 おうよ!!



(まさか、ダンジョンに穴を開けて水を抜くとはね……。リスティらしいや)

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