◆第28話◆「なんだかなぁ、リスティを回収しよう!(後編)」
「げへへへへへへへへへへへへ、うきょぉぉぉおおお!!」
奇声をあげる我が妹……。
なんというか、色んな意味で
青白く輝く結界の向こうで、オーガ達が何度も何度も突撃を仕掛けては跳ね返されている。
その度に結界がバリバリバリ! と火花をたてるのだ。
突破は不可能というが、実際に多少なりともオーガの体がめり込んでいる。
何度も何度も体当たりを仕掛ければ破壊できてしまう気もする。
しかし、リスティはそれを許さず今の今まで耐えきっていた。
あの狂ったような笑い声だけはいただけないが、実際に一人でこれを成し遂げているのだからジェイク以上に働いている。
「うぎょほほおほほほほほほほほほ!! うっほっほ!!」
うん、嫁の行き手がなくなるぞ……。
というか、あの奇声は出さなくてはダメなのだろうか。
ジェイクも白けた目をしている……。
「ビィト……。タイミングは俺が決める。リスティが結界を解いたら、すぐに回収しろよ」
「おう……」
ジェイクと簡単な打ち合わせを終えると、その声に気付いたのかリスティがすっごい形相で振り向いた。
「ぎょへへへへ────────……てめぇえらあああ! 終わったんなら、さっさとこれ何とかせんかい!!」
ダラーーーと涎を垂らしながらリスティが、まさに鬼の形相で怒鳴り散らす。
すぐ近くにオーガがいるので、よくわかりやすい比較ができる……。
うん………………リスティのほうが30倍怖い。
「わかってる! リスティ、5カウントだ。それが終わったら、結界を切れ───」
「5秒も待てるかボケぇぇぇエ!───おら、切るぞぉぉおお!」
ちょ!?
「チッ!──────いけ、ビィト!」
シュオォォン……。
リスティが憤怒の表情で仁王立ち。
あっという間に結界が消えてしまった。
本気でこの妹は5秒も待たずに消しやがった──────「ビィト!!」
「「「ぐるぉぉおおおおおおおおおおお!!!」」」
その瞬間襲い来るオーガの大群!
今までさんざん足止めをくれやがった人間の女を引き裂かんと、全軍突撃───!
「どぉぉぉせっぇぇえええええい!!」
ドカーーーーーーーーーン!!
そこにジェイクが切り込む!
早く助けなさいよと言わんばかりのリスティの首根っこを掴んで、ポイスと後ろに放り捨てるようにッ!
そして、大音響とともに振り抜いた一撃が、オーガ集団をまさに薙ぎ払う。
「丁寧に扱えやボケェェェ!!」
「口が悪すぎるぞ、リスティ!!」
その妹をキャッチすると、腰を抱きしめクルリと踵を返す。
「どこ触ってんじゃ、クソ兄貴ぃぃい!」
「やっかましい、舌噛むぞ──────ジェイク、任せるぞ!」
最後の仕上げと言わんばかりに、ビィトが氷塊の連射をオーガ集団の後方に叩き込むと、ジェイクに背を向けて遁走開始!
「───お前に言われるまでもなぃ、おらぁっぁああああ!!」
ズバン、ズバン、ズバン!!
と白刃とどす黒い血が交互に見え隠れするほど、凄まじい攻防が繰り広げられる。
いや、攻防などではない───ジェイクの一方的な殺戮だ。
瞬く間に突撃の衝撃力を奪われるオーガども。
そして、ジェイクが押し込むように一歩、一歩と前進し、オーガの集団を撫で切っていく。
「すげぇな……」
「ちょっと、下ろしてよ!」
リスティが、担がれているのが気にくわないとばかりにジタバタと暴れる。
あー、もう!
「ほら! 脱出するよ!」
ポイっと、床に下ろしてやると不満げにパンパンと埃を払う。
うわ、コイツくっせー……!
全身汗だくの、涎まみれのリスティの匂いはすさまじい。
まぁ、それだけ頑張ってくれたということなのだろうが……。
「ちょっと、どこいくのよ? ジェイクの援護は? さすがに一人じゃもたないわよ?」
「しないよ! そんな時間もない───急いでッ」
「はぁ?! ちょっと!」
ええい、もう一々説明する暇も惜しい。
「鍵の入手は成功───でもコッチも手ひどくやられた。ジェイクも限界寸前なんだよ」
「んなわけ──────うわ……手ェ酷いわね」
一応大雑把に回復させたとはいえ、まだまだ本調子とは言えないビィトの体。
手も小回復をかけて治したのだが完全回復とは程遠い。
だが仕方ない。
それもこれも時間がないのだ。
タイムリミットたる、
そのために割けるリソースは限られていたのだ。
だから、リズやエミリィの回復。
そして、出来る限り時間いっぱいにかけてジェイクに「
「だろ? そんだけ、いっぱいいっぱいなんだよ。っと、飛び込んで!」
「え? 飛び込めって、これ穴でしょ?! ちょ、ちょちょちょ、押さないでよ、押さないでってば!!」
リスティが前振りみたいに「押すな、押すな」という、件の落とし穴の前で───……うん。押していいよね?
「ほい、早く行けって」
「ちょぉぁぁあああああ?!」
何故か躊躇うリスティに、面倒くさくなったビィトは躊躇いなく妹の背を押す。
やたらと必死に、バタバタと鳥のように手を振って耐えていたが──────ズルン!
「───ぉぉぉおおおおお!! おーーーーぼーーーーえーーーーてーーーーーろぉぉおお!!」
あ、そうか。
中でエミリィたちが待機しているのを言い忘れていた。
てへ。
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