◆第28話◆「なんだかなぁ、リスティを回収しよう!(前編)」

「悪い悪い。ほら、鍵あったぜ」


「てんめぇぇえ……!」

 悪びれないビィトの顔を睨みつつ、鍵をひったくるジェイク。

 その様子に苦笑しながら、回復魔法を逐次かけてやる。


「ったく……。よし、ここまでは上々───あとは武器を回収して撤退だな」

「あぁ、そうしよう。…………もうリスティがヤバイ」

 色々と───。


 げははははははははははははははははははははは!


 うわー凄い笑い声……。うん、ヤバイ。

 あれで女の子ですよ?


 しかも、マイシスター。


「お兄ちゃん!」

「ジェイク様──────こちらを、回収いたしました」


 恭しく差し出される刀を、無言で受け取るジェイク。

 それを腰の略帯刀に納めると、簡単にミーティングを開始した。


「───時間がないから手短に言うぞ」


 全員コクリと頷く。


「脱出方針を変更する。───まず、前提条件の殲滅は無理だ。ゆえに、これより最上階を一気に脱出する方向へシフトする。脱出口はここに来た場所と、同じトラップを使う」


 ……あぁ、なるほど!

 それなら、新たにルートを開拓するより早い。


「リズと、……チビが先にトラップに入り、ロープを張れ。俺とビィトは敵に突っ込み、リスティを回収する───」


 コト、コトリ……と。


 小石や破片などを使って、ジェイクが簡単な立体図を作り、彼我の位置関係を説明していく。


 こうした、視覚を使った人の動きのシュミレートは重要だ。


「───まず、ビィトがリスティを回収して、結界を解く。直後、俺が連中に一撃し、薙ぎ払ったら一気に脱出だ」


 そういって、ジェイク、ビィト、リスティに見立てた石を動かす。


「次に、その間にリズ達は落下防止のため、ロープを使ってネットを張れ。ゆっくりとトラップに潜り込む暇はない。俺もビィトも飛び降りるつもりだ」


 コトリと、リズとエミリィの駒を動かす。


「わかりました。念のため何本かロープを張っておきます」

「そうしろ─────……質問はあるか?」


 うーむ。これなら……大丈夫そうかな?


 リズとエミリィが先にトラップの中で落下防止策をたて、その間にリスティを回収。そして、オーガどもにジェイクが突っ込み、一度押し返す。


 その後、隙を見計らってトラップに飛び込み、あとは脱出するのみ。


 うん……。これなら行けそうだ。


 オーガのサイズなら、トラップに落ちてもどこかで引っ掛かるだろう。

 そもそも、連中とて馬鹿ではない。

 待ち伏せがあると知りつつ、トラップの中にまで追ってくることはないはずだ。


「質問がなければ、行くぞ。時間が惜しい」


「わかった」

「はい」

「はーい」


 全員が認識したことを確認すると、ジェイクは軽く頷き先頭に立って歩き始めた。


 まだまだ、鍵を見つけただけ。

 それでも、難題であったボスは倒せた。


 だがら、あとは脱出するだけだ。

 少なくとも、そう考えたほうがマシに違いない。


「───ぬかるなよ、ビィト」

「おう、ジェイクもな。リスティは任せろ」


 カチン!───刀の柄と、さっき回収した闇骨王の杖をあわせる。


 さて……脱出だ。

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