◆第26話◆「なんだかなぁ、リズ! 凄いじゃないか!?」

 コイツ等のタフさは伊達じゃない!!


「うらぁぁっぁあああああ!!」


 バチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ!!

 バチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ!!


 途中でオーガメイジが救援に入ろうとしたようだが、そこにエミリィが切りかかる。


「させないッ!」


 オーガソルジャーのトドメを刺した後、血まみれになったエミリィがそれでもめげずに戦いを挑む!


「───たぁぁぁぁああッ!!」


 苛酷な奴隷生活を潜り抜けてきたエミリィは、血にまみれる事などいとわないッ!


「お兄ちゃん! こっちは任せてッ」


 スパパパパパッッ!!


 高速の連撃ラッシュ!!

 それは、どこかリズの技を彷彿させるような体捌きで、強大なオーガメイジを何度も切り裂く。


 コマのように、蝶のように───そして、蜂のように刺すッ!!


「トドメぇぇえ!!」


 ぶしゃぁぁあ!! と、血煙が立ち上る。


 あっという間に、ズタズタにされたオーガメイジ!


 だが、敵はまだまだいる!


 君しか自由に動けない───、

「エミリィ! 奥に行って! まだアーチャーがいる!! 連中、復活するぞ!」


 遠間から弓で狙撃していたアーチャーも、軽装ゆえご多分に漏れず「瞬光フラッシュバン」を喰らって、目が焼けていたようだ。


 だが、距離があったためか、光による影響は至近距離よりも、多少は軽減されているようだ。


 数体のオーガアーチャーが、目をしぱたたかせながらも、戦列に復帰しつつあった。


「うん!!」

 ───任せて! と、


 エミリィの血まみれでありながらとろけるような笑顔をうけ、ビィトも微笑み返す。


 本来なら女の子を死地に送り込むなんて、言語道断かもしれないけど、エミリィはそうじゃない───!



 ビィトが最も信頼する!パートナーだ!



「──────私も信頼してくださいね」


 ニコリと微笑み、そう言ってすぐ近くに降り立ったのはリズ。


 手の包帯には血がにじんでおり、息は荒いものの余裕を感じさせるように、薄く笑っていた。


「───もちろん…………ずっと前から信頼しているよ」


 今も、昔も、「豹の槍パンターランツァ」にいた頃から───ずっと……。


「光栄です────いきます! しぃぃッ」


 シュン! と残像だけ残してリズが疾走。

 彼女の動きに翻弄されていた、オーガガーディアンは息も絶え絶えだ。


 だが、頑丈な装甲に護られたオーガガーディアンにはリズの刃が通らない。


 リズは強者だが、敵との相性が悪いのだ。


 普段の彼女なら様々な手があるのだろうが───今は文字どおり手がないのだろう。


 だが、それでもリズが負けるイメージは湧かない。

 そのイメージだけはどうやっても浮かんでこないのだ。


「ふふ……ビィト様の信頼──────答えてみせましょう!」


 リズはオーガガーディアンの前にワザと身を晒すと、奴の攻撃を誘発する。


 ごぉああああああああ!!!


 戦斧が猛烈な勢いでリズに叩き込まれる!


 それを、ギリギリのところで躱して!腕に固定した短刀でいなした。


 ギャリィィィィイイン!!


 と火花がたち、この輝きがリズを美しく際立たせる。


 だが、リズの目的は、最初からこの火花だったらしい──────……懐から取り出した『火薬』の入っているという、炸裂弾をいつの間にか口にくわえていた。


 その導火線に、火花の火が移る────!


 じじじじじじ……!


(な、なにを?!)


「ふふふふふ…………!」


 リズが笑う。


 点火と同時に跳ねるようとび、オーガガーディアンの懐に飛び込むと、オーバーヘッド気味に足をかち上げ、オーガガーディアンのフェイスガードを跳ね上げる。


 ガチャーーーーーン!


「ごぁあ?!」


 そのまま空中に舞い上がりクルリと反転。

 抱きしめるようにオーガガーディアンにくっつくと、まるで口づけをするように──。


 プッと吐き出すと、

「───さようなら」


 ぽとり、と、炸裂弾をオーガガーディアンの兜の中に落とし、しなやかに動く足で優しくフェイスガードを閉じた。


 ガシャーーーーーーン!


「ごあ!? ごあおああああ!?」


 混乱したオーガガーディアンが、慌ててフェイスガードを開けようと──────ドッッカガァァアアアアン!


 と、頭部が爆発し、奴は絶命した。


 フラリと倒れた体が、地響きを立てて崩れ落ちる……。

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