◆第24話◆「なんだかなぁ、ブッ飛ばされました」

 って!

 たけぇぇぇええ!!


「馬鹿野郎、諦めるなッ!──────リズ! そして、ちっこいの! 手を貸せッ」


 ジェイクがビィトの真下に来ると、腕を組んでブーストの準備。


 意を察したリズが、直ぐにジェイクの組んだ手に足を乗せる。


「飛べぇ!!」

「はいッ」


 タッ、トーーーーン!! と、軽い跳躍でリズが空を舞う。


 そして、空中でビィトを掴むと抱締め、ビィトの代わりにロープを掴む。


「リズ?!」

「黙って! 舌を噛みますよ!──────ぐぅ!!」


 二人分の体重を支えるリズ。

 高所落下を防ぐために、無茶な姿勢でロープを掴んだのだ。


 途端にリズの手がロープとの摩擦により割けていく。


「無茶するな!」

「アナタを助けることの、どこが無茶───ぐあああああああ!!」


 ビィトの顔にピピッと血が降りかかる。


 リズの手は、骨が見えそうなくらい皮と肉が裂けていく。


「あああああああああああ!!」

「よすんだっ! リズ───!」


 だが、ここでビィトを離す選択肢はリズにはない!

 手の一本や二本、失くすつもりでビィトに尽くそうとする。


 そして、眼下ではジェイクとエミリィが残ったオーガの残党を相手に奮戦していた。


「リズ───?!」

「も、もう少し───……! ぐぅぅ」


 歯を食いしばるリズに、ビィトは何も出来ない。

 自身の手も負傷しているため、まずは小回復で自分の手を回復させねば、リズに施すことすらおぼつかない。


 そして、ようやく──────!

 達着!!


「来たかッ?! 助かったんなら、手伝えぇぇえ!」


 群がるオーガに、ジェイクとエミリィが背中合わせりなり迎撃戦を繰り広げている。


 なんとか二人でビィトの着地点を確保するも、限界だ!


「「「ぐるおおおおおおおおおお!!」」」


 オーガの兵士は、ボスが倒されたことで怒り狂っている。

 そして、合同パーティは負傷し、あまりにも消耗───みんな疲れ切っていた。


 間の悪いことに、ジェイクの刀は天井だ!


「お兄ちゃん! は、はやく」


 エミリィはベアリング弾を打ち切ったのか、慣れない弓を使って迎撃しているも、ほとんど牽制にしかなっていない。


 今一人、奮戦しているのはジェイクのみ。


 鞘と短刀で何とかギリギリ凌いでいるも、オーガの防御を崩すには至らない。


 ジリジリと追いつめられていくジェイク達。


「ビィト様、治療は大丈夫です───ポーションを! あとは行ってください!」


 リズは手が血だらけで、自らポーションを取り出すことも出来ずに、ブルブルと震えている。


 相当な激痛だとはわかるも、リズのいうとおり、一刻の猶予もない。


 助かった余韻に浸る間もなく、ビィトは征く!


「───使って!」 


 腰の物入れからポーションを取り出すと、口を開けてリズの前に置いた。


 彼女は礼を言って器用に口だけで掴み、少し口に含んで飲むと同時に、霧状にして傷に吹きかけている。


 ほとんど気休めだろうけど、ビィトの購入したポーションは質だけは中々の物。


 あとはリズ次第だ。


 回復魔法で回復させてあげたいところだけど、ビィトは自分の手を治すだけで精いっぱいだった。


「──────早くしろぉぉおお!!」

「おおおおお、お兄ちゃん!!」


 なんとか、一体のオーガソルジャーを仕留めたジェイク。


 そして、エミリィも弓を破壊されながらも闇骨ナイフでオーガメイジにトドメを刺していた。


 だが、限界だ!!



「皆、目をつぶれぇぇえ!!」



 だけど、こういう時はこれだぁぁああああ!!



 ジェイク達に向かうビィトの元に、満身創痍のシャドウオーガが立ち塞がる。

 そして、二手に構えた苦無を持って低い姿勢で突進!


 それを援護するのは、同じく満身創痍のオーガガーディアン!


 さらに、残った数十体のオーガの兵士が、ビィトが一番の脅威と認識して圧殺にかかる。


 かかるが─────────!!


「そう来ると思ったよぉぉぉおお!!」


 幻惑魔法……「瞬光フラッシュバン」だぁぁああ!!



 カッ─────────!!



 眩い光がビィトの魔法として顕現する!

 「嘆きの谷」でグレーターゴブリンの目を焼き潰したほどの光量だ!



 これは効くだろうッッ!



「「「「ごぁああああああああ!!」」」」

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