◆第21話◆「なんだかなぁ、ボス戦だぁあ!(前編)」

「二人とも、任せるよッッ!!」

「任せてッ!」「お任せくださいッ!」


 最高の女たちの、最高にハイな声援を受けて、ビィトはオーガジェネラルに向き直る。


 「悪鬼の牙城」の主にして、オーガの上位個体、オーガジェネラル!!


「その首級──────貰うぞッ!!」


「ごぉぉあああああああああああ!!」


 かかってこい! そう言っているに違いない。

 オーガジェネラルはハルバードを引き絞るように、刃を背後に向け腰を落とす。


 あの巨体で、あの巨大なハルバードだ!

 その一撃たるや、いかほど────……。


「ごるぁ!!!」


 ブンッ……!


 何かが降り抜かれたと思った瞬間────ズドォォオオオオオオオオオオンンンン!!


 シャレにならないくらいの圧倒的パワーが、悪鬼の牙城の床から天井を駆け抜けていった。


「ひ、」

 ひぃぇぇぇえええ……!


 たったの一撃で床にはクレーターが……。

 階下に抜けないのが不思議なくらいだ。


 そのうえ、パラパラと石くれが落ちて来たかと思うと、天井にも酷いえぐれ痕が───。


 たったの一撃。

 たった一撃でこれだ。


 それは、立ち向かおうとしたビィトの戦意を挫かんばかりの一撃ッ!


「じょ、冗談じゃねぇ……」

 こんなの擦っただけで消し飛ぶぞ!


 それほどに強烈な一撃。

 味方の損害も気にしない程の一撃は、ハルバードの圏内にあったものすべてを切り裂いていた。


 床、壁、天井──────……そして、ボス部屋の一画の天井のぶっ飛ぶほどの威力。


「ごるぅ……」


 ぶしゅー……と、熱い息を吐き、ビィトを威圧するオーガジェネラル。


 なるほど、小手調べの一撃か……。

 ボスらしく貫禄のあるオーガジェネラルは、無暗な追撃をすることもなくハルバードの石突きをズン! と地面に突き立て腕を組んでビィトを見下ろす。


 これでも、くるか?

 そう言っているらしい──────。


 今の一撃に怯えたのなら去れ───と。


 そうだ。

 ビィトは怯えた。


 怯んで、腰を抜かしそう。

 だけど、それがなんだ?


 人間なんだ。

 圧倒的なパワーに怯んで当然だ。

 尻尾をまいて逃げたとして誰が咎められようか?


 撤退─────────?


 はッ!

 そんなもん……。


「───行くに決まってんだろうがぁぁぁあああああ!!」



 仲間が!!

 ジェイクが!!

 リスティが!!


 皆が死力を尽くして戦っているんだッ!!


「俺一人、退くわけがないだろうがぁぁああああ!!」



 舐めんじゃねーーーーーーーーぞぉぉぉぉぉおおおおおお!!



 腕に、「身体強化ブースト」! そして、足に、肺に、心臓に──────……全身満遍なく、何度も何度も重ね掛けッ!!



 重ねに重ねて、重ねて、重ねて! 倍の倍の倍の倍の先へ──────!


「ボサっーと構えてるとかなぁあああ!!」


 ボスだからって、舐めてんじゃねーぞ!!

 そんな時間をくれるなら、こっちもやってやらぁぁぁああああ!!


 「身体強化ブースト」!!


 「身体強化ブースト」、「身体強化ブースト」、「身体強化ブースト」!


 「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト」「身体強化ブースト



 強化、強化、強化ぁぁぁぁあああああああああ!!


「おあぁぁぁぁああああ!!!」


 ビキビキ、と体に過剰なまでの魔力が巡っていく。

 だが止めない! むしろ、闇骨王の杖で、それらをさらにさらに強化!!


 強化に継ぐ、強化!


 腕も足も指先、爪の先端に至るまで強化!

 そしてぇぇえ───腰を落として構えてみせると、足の先の床がズンッ! と割り抜かれるッ。


「ぶふぅぅ……!」


 オーガジェネラルを真似して、ビィトも熱い吐息をつく。


 そして、奴を見上げニヤリと笑う。


 あははは。

 「器用貧乏」と呼ばれ、パーティをクビになった間抜けが、まさかボス退治を任せられるなんてな。


「世の中分からないことだらけだよな……そう思わないか?」

「ごるるるるる……」


 ビィトの言葉を理解しているのかいないのか。ただ、ヤル気だけは感じ取ったらしい。


 オーガジェネラルもニィィと、好戦的な笑みを浮かべると、ハルバードを引き寄せるとズンン! と、凄まじい重量感を持って刃先をビィトに向けた。


 これでも来るかって、言ったよな……?


「ふ…………。初めに言っただろ?」

「ごふぅ……!」


 その首級──────。


「──────貰い受けるッッ!!」

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