◆第21話◆「なんだかなぁ、ボス戦だぁあ!(中編)」

 その首級──────。

「貰い受けるッッ!!」


 ビキビキビキッッ!!


 ズドンッッ!!──────床を割り抜いてビィトが一気に跳躍する。


 いや、跳躍したわけではない。これは、ただの一歩。


 それが強化に強化を重ねた脚力によって、恐ろしいまでに長大かつ高速の一歩を生み出した。


 そして、強化された視界のなか、完全にオーガジェネラルの動きを捕らえるとその急所目掛けて一直線!!


「うらぁぁぁあああああああ!!!」


 魔法の発射速度よりも、魔法の飛翔速度よりも素早く動くビィト!

 今撃てば、魔法を後ろの置き去りにしそうなほど速度で一気に迫るッ!!


 こういう時は、

「───肉弾戦じゃぁぁああああああ!!」


 魔術師の最後っ屁とも言われる「魔力刃マジックブレイド」!


 それを初手から、ぶっ放す!!


 魔力を過剰に注ぎ、熟練度で錬成し、闇骨王の杖の相乗効果で威力を倍増し、無敵の刃の如く───長く長く鋭く鋭く!!


 籠める魔力は───────『小爆破』!


「爆裂術士の刃──────とくと見ろぉぉおおお!!」


 無色の魔力が、刃となって闇骨王の杖の先端に宿っていく。

 それは、未だかつて見たこともない攻撃方法!


 範囲攻撃魔法を近接戦闘かつ、肉弾戦の白兵距離で使うという暴挙!!


 だが、勝算なしにやるはずもない。


「ごるぁぁぁあああ!!」


 そして、まんじりとそれを食らうほどオーガジェネラルも馬鹿であるはずもなく、ハルバードの鋭い突きを繰り出しビィトを引き裂かんとするッ!


 ビュゴォォオ!

 空気を引き裂く豪速の切っ先!!


「───遅いッ!!」


 それを、身を捻るだけでその一撃を躱す。

 そしてさらに一歩!!───ダンッ!


「ごがぁぁ!!」


 しかし、オーガジェネラルも動揺などしない。

 躱されることも折り込み済みなのか、手首のスナップだけでハルバードの刃先をスイッチすると、突きの一撃に変化を加えて追撃する。


「んな?!」


 なんと、今度はハルバードを思いっきり引き付け後ろに退いたのだ。


 突きからの、引き付け!!


 ハルバードには槍部分と、斧部分の側部がある。


 斧部分は返しがついており、引き付けるだけで、引っかけるだろう。

 それは肉をも抉るほどの鋭さがある。


「こいつ?!」


 その返し部分がビィトに迫るッッ!!


「───ちぃぃいいい!!」


 それを見越してビィトはジャンプで躱す!

 

 しかし、それは悪手だったらしい。

 ニヤリと口を歪めたオーガジェネラルが渾身の力を込めて、一歩踏み込む!


 オーガジェネラルの強烈な踏み抜きだ!!


 ズドンッッ!───と床が砕ける大きな衝撃と共に、床材が剥離してビィトを襲うッ。


「ぐぁ────! 頭の切れるやろうだ」 


 幸いにして「風の盾」を展開しているため、直撃はない。


 ない、が───奴の一撃でぶっ飛んできた床材の巨大なこと!


 ボロボロだったローブがさらにボロボロになっていく。

 その上、突撃の衝撃力が失われてしまった。


 今、一番の痛手はそこだ。


「チィ!」 


 戦闘が長引けば長引くほどこっちが不利になる。

 オーガジェネラルは無数の手下を従えているが、こっちの合同パーティはたったの5人。


 しかも、リスティは現状足止め要員でしかないため戦力には数えられない。


「ぐるぁぁぁあ!!」


 くそ───!

 考える時間も与えないつもりか!!


 オーガジェネラルが、頭上でハルバードをブンブンと振り回し始めた。

 あの動きにほとんど意味はないが、オーガジェネラルが意味のない行動をするとも思えない。


 ならば───……ええい、ままよ!!


 無駄のことを考えるよりも、一撃を食らわせろぉぉぉおお!!


「見え透いた挑発に乗るかよぉぉおお!!」


 ビィトの叫びを掻き消すかのような強烈な一撃が頭上から降り注ぐ───。


 いや! 違うッ!!

「本命はそっちかぁぁぁあ!」


 ───ズドォォォォオオオオン!!


 オーガジェネラルがハールバードの回転でビィトの気を引こうとしているのは明らか───そう思った瞬間、奴の足蹴りが炸裂した。


 ハルバードを振り回しながら?! なんて器用な奴───!


 しかし、その一撃はビィトにも予測できていた。


 何かあるな───と疑ってかかっていたので一瞬早く行動できた!!


 床が抜けそうなくらいに強力な一撃を躱すと、逆にその一撃を利用して反撃に移る。


 舞い上がった床材に着地し、それを足場として飛び──────そして、オーガジェネラルの膝に着地すると、

「どおだぁぁああ!! ここまで肉薄すれば長柄は不利だろうッッ」


 ───って!?


 ギュポン!!


 オーガジェネラルの奥の手も奥の手!

 なんと、ハルバードの刃と柄を抜き取り二手に構えやがった。


 仕込みハルバード?!


 片方は取っ手の短い斧のような武器だが、先端を失ったハルバードはただの棒でしかない。

 ハルバードの柄に攻撃力はなさそう───って、んなわけあるか!!


 オーガジェネラルの膂力で振り抜かれるなら、刃がついていようがいまいがほとんど関係ない。


「ぐるぉぉおおおお!!!」


 二刀流の構えでも、まったく姿勢のゆらがないオーガジェネラル。



 そのまま、両手に構えた武器でビィトを圧殺しようと迫る!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る