◆第19話◆「なんだかなぁ、激突するぞ!」

 オーガどもの包囲網を切り抜けたビィトたち。

 しかし、ジェイクは一人この中に取り込まれてしまった。

 無情にも、ビィトたちがこじ開けた包囲環がオーガ達の体躯に埋もれていく。


「ジェ───……!」


 そのまま、ジェイクは集団の中に残され圧殺されるかに見えたが、

「ようやく足手まといがいなくなって、せいせいするぜ───!」


 相変わらずの憎まれ口を叩いたかと思うと!!


「生ぬるい包囲で俺が倒せるかぁぁぁあああ!!」


 ズバババババババババッッッ!!


 煌く白刃と、飛び散る血肉ッッ!!


 まるで竜巻のように白刃を振るうジェイクが、オーガ集団のど真ん中で暴れたかと思うと、その包囲を抜け出し、あっという間にビィトの背中に迫る───……。


 ドンッ。と背中合わせになった二人。


「ジェイク、調子は?」

「乗ってるぜ」


 フッと互いにニヤリと笑う。


「ビィト見ろ、お前の相手はアイツだ」

「あぁ、強そうだ」

 

 ビィトの正面には、巨大なオーガの将軍が一体。

 見上げるビィトに気付くと、ニィと口を歪め、傍らのハルバードを手に取り、玉座を立ち上がった。


「そっちこそ、凄い数だぞ? 大丈夫か?」

「誰にものを言っている」


 そして、ジェイクの正面には大量のオーガの兵隊ども!

 数えるのもウンザリするが、これをすべて相手せねばならないらしい。


「───いけ。ここは任せろ」

「───おう。こっちも任せろ」


 火力に優れるジェイクが集団を押さえ、

 連射と持続性に優れるビィトが、支援役の二人を加えてオーガジェネラルを獲る!


 これがジェイクの考えた作戦だ。


 逆にしても良かったのかもしれないが、ビィトの魔法では一発の火力が弱すぎる。それでは押し切られる公算が高いのは周知の事。


 そうとも、いくら無限に近く連射できたとしても、敵とて一撃で倒されるほど弱くもなければ馬鹿でもない。


 しかし、ジェイクならば可能。

 

 アホのような大火力で、敵を撫で切ることができる。


 前回は、ジェイク一人で全ての敵を倒そうとしたがために押し切られ失敗した。

 それはオフェンスとしての戦力を、自分一人しか頭数として見ていなかったからだ。


 いや…………違う。そうじゃない。


 ジェイクはビィトを自分に比肩する火力として認めたくなかったのだ。


 だから、無茶をした。

 そして、失敗した──────。


 だが今回は違う。

 オフェンスが二人。


 一人が敵を押さえ、一人がボスの首級をあげる……!


 元からできたはずの戦い方を、いま取ったというだけのこと。


「行けッ!!」

「行くさッ!」


 ──────トンッ!


 互いの背中を発射台にして、ビィトとジェイクは走る!


 ジェイクは無数の敵を!!

 ビィトは無敵のボスを!!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「らぁああああああああああああああああああああ!!」


 ズガーーーーーーーーーン!!


 と、生き物の臭突する音ではない大音響を立てて、ジェイクが再び集団に挑む。

 ボスの支援には、向かわせないとばかりに、敢然とボスの取り巻きに立ち塞がり、オーガジェネラルだけを分断して見せる。



 そして、ビィトが少女二人と駆け抜ける!


「リズ、エミリィ───!」

「はい!」「うん!!」


 左右に小柄な影が付き従い、ビィトの死角をフォローする。


 そして、

 ジェイクの作った空間を駆け抜け、オーガジェネラルに迫るッッ!


 「ふしゅー……」と、熱い吐息を吐いたオーガジェネラルがハルバードを持ち上げるのを見ながら、

「先手必勝!! 燃えて、凍れぇぇえ」


 左手に「火球」を作り、牽制射撃!

 そして、連中の弱点らしき「氷塊」を闇骨王の魔力伝導を利用して威力を最大限にあげてからの──────発射ぁぁあ!!



 これは当た───……ん、んなにぃぃぃぃいいい?!


 ドガァァァァアアン!!


 と、すっさまじい爆発音のような衝撃とともに、ハルバードが床を叩きつけそのまま、瓦礫ごとビィトを薙ぐ!!


 ズドン! ズドン!!───と、火球も氷塊も破片や瓦礫と共にかき消されてしまった!


(強引に魔法を打ち消しやがった……!)


「さすが、オーガ最上位種! そして、『悪鬼の牙城』のボスだ!」

 



 ……そう簡単に行くはずもなしッ!

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