◆第17話◆「なんだかなぁ、突入開始だッ!」
「ぐ……せまい!」
「ちょっと、どこ触ってんのよ!?」
「俺じゃねぇよ! バカ妹を触って何が楽しいんだよ!」
「すみません、私です───リスティさま、しっかり掴んでいないと落ちますよ」
「うー! あーつーいー!」
ぎゅうぎゅう詰めの空間。
エミリィとリズの啓開したトラップ下の通路は、恐ろしく狭く、そして恐ろしく急な斜面でできていた。
これは、落とし穴に落ちた間抜けな侵入者を煙突のあった空間にポーーーン! と捨てるための、ダストシュートのような物なのだろう。
そこにロープを這わせて、上へ上へと行くのだが、当然ながら人が登ることを考慮したつくりではないので、凄まじく不親切な作りだった。
……当たり前だけどね。
それにしても、オーガ以上の巨大な生物が落ちるように設計せれた落とし穴にしては、狭いことこの上ない。
「はぁ、はぁ……! こ、ここか?」
先頭のジェイクは、リズの補助を受けながらトラップの真下に立つ。
「微かに風が流れ込んでくるな……」
風、そして僅かに光が差し込んでいる所を見ると、完全に閉塞しているわけではないようだ。
「これくらいなら──────行けるな。……おい、敵の気配は?」
下でロープにぶら下がているリズやエミリィに声をかけるジェイク。
「んっと~、ボスらしき巨体の方にたくさん……かな?」
「この付近にはいませんね───詳細は不明ですが、敵の動哨のルートでもないようです」
リズとエミリィが、それぞれ探知スキルを使って敵を探っている。
そのスキルの圏内には敵の気配は薄いらしい。
「よし、行けるぞ! 俺の合図とともに突入する。あとは打ち合わせ通りだ」
「了解」「は~い」「お任せを」「は、はい」
既に終えているミーティングの、最終確認。
ジェイクを中心として、皆がシュミレーション済みだ。
あとは、出たとこ勝負ッ!!
「リスティ、カウントだ───」
「はいは~い、3───」
2、
ゴクリ……。
1、
「0──────ゴー、ジェイク!!」
「ふん!!」
シャキン───!!
トラップ下の暗闇の中、僅かな照り返しを受けてジェイクの白刃が煌く。
それは薄い落とし穴を切り裂き、真っ二つにすると───……。
「ビィト!!」
「おう!!」
魔力最大充填!
方向よし──────!!
「らぁぁぁああ!!」
「
落下物と粉塵ッ! それらが真下のパーティメンバーを襲う前に、ビィトの魔法が炸裂する。
フワリと舞っていくそれらが、地面に落ち切るより前にジェイクがリズのブーストを受けて飛び出したッ!!
「シィ───!!」
鋭い気合と共に、迷いなく踏み込んでいくジェイク。
そして、その後に続いたリズが一人でトラップをよじ登り、次々にパーティメンバーを引き上げていく。
リスティ、ビィト、エミリィの順だ!
2番目に敵地の乗り込んだリスティだが、その実、この作戦の
「いくわよぉぉぉぉお!!」
回廊のど真ん中に躍り出た合同パーティは、最上階の敵戦力を分断する位置に突如出現したことになる。
最上階の通常ダンジョン部分と、ボス部屋を繋ぐ回廊。
その真ん中に出現したわけだ。敵からすれば分断でも、合同パーティからすれば挟み撃ち。どちらにとっても危うい状態────。
だけど、
「不浄なるものよ───!! 我が聖域を犯すことなかれッ!!」
ブワッ!!!
高位神聖魔法───
いわゆる結界魔法で、短時間ならばどんな敵でも寄せつけない強靭さを誇る。
問題は燃費の悪さだが…………。
「長くはもたないわよ!! さっさと決めてちょうだい」
「言われるまでもない!」
「いくよ! エミリィ、リズ───援護して!!」
「「はい!!」」
リスティ一人残して、合同パーティはボス部屋へ一気に突っ走る。
その背後で「「「ぐるぁぁあああ!」」」と物凄い咆哮が響いたかと思うと、分断された敵の大群が一挙にリスティに襲い掛かっている所だった。
だが、バチバチバチ!! と青白い火花をスパークさせるのみで、全く近寄れないッ!
「あっはっはっはっは!! こ、
引き攣った笑みのリスティが、一人で敵を防いでいる──────……死ぬなよ、リスティ!!
「よそ見をするな! 来るぞッッッ!!」
ジェイクを先頭に、ボス部屋に躍り込んだ合同パーティは、敵の一斉攻撃を受けることとなった!
その数たるや──────!!
「「「「ごぉぁぁぁあああああ!!」」」」
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