◆第11話◆「なんだかなぁ、通信魔道具を使おう」

「見覚えのある矢だとは思ったが……。クソ、嵌められたな」


 竈に矢を放り捨てるジェイク。

 だが、ビィトには未だ事態が読めていない。


「そのボウガンのボルト弾───連中の物資にあったものだな?」

「あ、あぁ、そうだけど───。あ! そういえばやたらとボウガン持ちが多かったな。盾とボウガンで、まるで軍隊みたい……」


 え?

 軍隊…………?


「そうだ。連中は、冒険者などではない──────。見ろ」


 エミリィの矢筒にあるボルト弾を取り出すと、今度は全員に見えるように高々と示す。


 とは言っても、ビィトもリスティもピンとこない。


 エミリィに至っては理解すら不能───だが、たった一人、リズだけは眉を潜めていた。


「王国製…………」


 リズ?


「そうだ。間違いなく王国製のボルト弾だろう。いや、今は共和国か? まぁ、それはいい」


 え?

 どゆこと?


 俺達の故郷の連中が、こんな所までどうして?


「───問題は連中が部隊を差し向けてきたという事だ。「鉄の拳アイアンフィスト」は、ただの仮の姿か、利用されているだけだろうな」


 いやいやいや。

 急に何なの?!


「どうして、故郷からわざわざ……」


 しかも、ジェイクを狙って───いや、「豹の槍パンターランツァ」そのものを狙ったのか?


「知るか。…………大方政変があったか何かで、俺かお前か、それともその全員が邪魔になったのかもな───興味もない話だ」

「そん、な……」


 そんな理由で人を殺したのか?

 大量の冒険者の他に、ジェイク達まで殺そうとするなんて───。


「連中が軍の部隊か、軍隊崩れかは知らないが、まともに戦ってもかなり苦戦するだろうな」

「どう、…………するんだ?」


 茫然としたビィトの言葉に、ジェイクを反応を返せない。

 裏切り者の「鉄の拳アイアンフィスト」が敵であるうえ、本当に軍隊ならば補給切れを待つのも難しいだろう。


 補給も兼ねて、続々と人を送り込んできている節もあった。


「さぁな。どっかのバカが跳ね橋を落とさなければ、やりようもあったがな」


 く……。


「とりあえず、ギルドに連絡を取ろう───こいつを借りるぞ」


 ビィトでは使用法が分からず放置していた通信魔道具を示すジェイク。

 やはり使用法を知っているらしい。


 了解を得ることなく、カチカチと操作を始めたジェイクだが、指の動きが複雑すぎて何をやっているのか分からない。


 ぶつぶつ、

「……暗号はなし、セキュリティが甘いのは俺についてきた脳無しに使わせるためか、バッテリーはまだ持つな……よし、」


 一人でブツブツと勝手に納得し勝手に頭をひねるジェイク。

 ……使い方をレクチャーする気など一切ないらしい。


「履歴、履歴……………………な?? ど、どういうことだ?」


「どうした?」


 ジロっとビィトを睨み付けるジェイク。

 だが、取りあえず機嫌を損ねたわけではない様だ。


「──────知らん連絡先が多数あった。それはまぁいい。だが、見知った連絡先があった…………どこだと思う?」


「え? 御国の誰か偉いさんか?」


 「鉄の拳」が、王国から来た連中なら、貴族同士の付き合いで聞いたことのある連中と連絡を取っていてもおかしくはない。


 今は、その権力が全て剥奪されていたとしても───だ。

 旧貴族が、未だ無視できない発言力を持っているのは間違いないのだから。


「──────ギルドだ」

「……………………は?」


 今、何て言った?


「何度も言わせるな、間抜け! 冒険者ギルドだと言っている。……連中、ギルドとグル──────」


 ピーピーピー!


 ジェイクが答えようとしたその瞬間、件の通信魔道具がけたたましく鳴り響いた。


「ッッ!!」


 思わず、ジェイクも通信魔道具を取り落とす。

 それほどまでにタイミングが衝撃的だったのだ。


「び、ビビらせやがって…………くだんのギルドからだと?」


 ビィトには読めないが、ジェイクが言うにはギルドからの発信を示す文字が出ているそうだ。


「メインを切っていたから、今まで連絡できなかった───ってところか。……面白い。どんな奴が俺を嵌めたのか聞いてやろうじゃないか」


 ニィと凄惨な笑みを張り付けたジェイク。

 その凄味でエミリィがドン引きしている。


「ど、どうするんだ?」

「───でるさ」





 ピッ。

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