◆第82話◆「なんてこった、何してるんだろう?!」
「ふぅ…………」
大きな息をつき、怒気をはみ出すビィト。
目の前には強化されたジェイクがいる。
散々罵倒されて、さすがに頭には来たものの、まだ意識はそこそこ
だけど、やっぱりジェイクは強い……。
ありとあらゆる手段を尽くしてみたものの、それをすべて正面から切り伏せる───とんでもない使い手だ。
まさか、水も火も剣でかき消されるなんて誰が思う?
剣で魔法が止められるなら、魔術師なんて職業は必要ない。
その気になれば、ジェイク一人で、ダンジョンすら踏破してしまえるだろう。
しかも、見ろよ───!
ジェイクの奴は峰打ちだ。
考えられない……。
あれで、本気ではないと言う事だ。
ビィトが考えに考え、機転に機転を利かせて、いくつもの
所詮、ビィトは小細工しかできない。
正面切って魔法を使っても、ジェイクには絶対に通じない!!
それは殺さないように加減しているから、とかいうレベルではないのだ。
水矢を高圧縮したところで、ジェイクは切り裂くだろう。
火球の熱量を最大にしたところで、ジェイクは切り裂く。
石礫は軌道を逸らされ、きっと命中すらしない───。
氷塊、小爆破には多少効果があるかもしれないが、あれは至近距離で使うと、こっちも被害が出る。
それをジェイクが知らぬはずがないのだから、使用させないためにも、一気に肉薄するだろう。
仮にされれば、二人とも自爆だ。
(くそ…………! やりにくい───)
閃光による目くらましすら読まれているなんて───。
しかも、刀身で反射させるだと?!
どんだけ出鱈目な剣士だよ!!!
あーあーあーあーあーあー!!
分かってる。わかってるさ!!
ジェイクは最強で、至高の剣士───!
コイツが何かに負ける姿なんて、一度たりとも見たことがない!
少なくとも一対一なら、ジェイクはありとあらゆるものに勝って見せるだろう。
───ダークボーンドラゴン?!
そんもん、
ジェイクにかかれば『秒』だよ、『秒』!
ジェイクだって確かに魔物相手に撤退することはある。
あるけど、それはほとんどがパーティの損害を恐れてのことだ。
魔物の大群に襲われれば、ジェイクだけ生き残って、その他のメンバーがだけが死ぬなんてことは想像に難くない。
ジェイクの火力が絶大だが、全てを賄いきれるわけではない。
それを補うためのリズやビィトだったのだが、───……あぁそうさ!!
力不足だよ!
火力不足だよ!
俺の全てが不足していたよ!!
だから、ジェイクを失望させ、段々段々辛く当たられ、雑用ばっかのゴミクソ魔術師に成り下がってしまったよ!!
あーーーーーーーーーそうだよ!!
全部俺のせいだ!!
あーーーーーーーーー知ってるよ!!
俺は無能で役立たずだ!!
あーーーーーーーーー何とでも言えよ!!
俺は間抜けで、パーティに寄生しているノミ野郎さ!!
だけど、それとこれと、今回の件は何の関係もないだろ?
別に、お礼を言ってほしいわけじゃないさ!!
純粋に、本気で、ただ心配だっただけだろうが!!!
そこで何で罵倒されにゃならんの?!
そのうえ、なんでリズを殺して食うって発想になるの?!
どーーーーして、素直に物資を受け取ろうとしないんだ?!
ジェイク──────。
おまえ………………。
バっっっっっっっっっっっっっっカじゃねーーーーーーーーーーの?!
いや、もういい。わかった。バカだ。
お前はバカだ。
バカ決定。
バカに付ける薬はないから、
「一発ぶん殴ってわからせてやる!!!」
とは言え、…………ジェイクは強い。
とてつもなく強い───……!!
どうやれば一撃を入れる事ができる?
どうすればいい?
下手な小細工は利かない───むしろ、失敗すれば手痛い反撃をくらうだろう。
そうそう、隙を見せる男でもなし───。
魔法を連射し、手数で押そうにも、一歩も動かず全部を切り伏せる出鱈目な野郎だ。
魔力が切れる以前に、ビィトの体力が持たない───。
いや、ジェイクは切り伏せながらも徐々に前進できるくらいに余裕がある。
距離を詰められてしまえば魔術師なんて、タダの丸太と同じだ。
くそ………………。
どうすればいい───。
悩むビィトの目の前では、目をギラギラとさせたジェイクが余裕綽々と言った様子で剣を構えている。
いつでも来いと言っているのだ。
だが、誘いに乗っていいものか……。
ジワリと嫌な汗が噴き出すのを感じる。
体力的には余裕があると言うのに、妙に動悸が激しい。
こんな感覚──────初めてだ。
ジェイクと戦うのも初めてだけど、やっぱり強い──────最強の男だ……!!
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