◆豹の槍25◆「なんで戦ってる?!」
(くそ! クソ! くそくそくそくそっ!)
やっぱり来やがった!!
やっぱりだ!!
あーあーあーあーあーあー!
そうさ、わかってたさ!!!
ビィトの野郎が来ることくらい───!!
あの、お節介野郎は絶っっっっっっっ対、来るだろうな、ってよぉぉぉおお!!
強化薬を飲み、世界が虹色の光を放つ中───。
高揚感と全能感の中で、ジェイクの心では抑えに抑えていた鬱憤が爆発寸前だった。
ビィト・フォルグ───。
ジェイクの
あーそうだ!!
俺は、ビィトのことをよく知っている!!
嫌になるくらい知っている─────!!
あのクソボケが、どれだけ出鱈目な野郎か知っている!!!
俺は…………。
俺は!!!
「───俺は、お前が大っ嫌いだ!!」
ボロボロの回廊の上を駆け抜けながらビィトを追う。
いや、……追われていたんだったか?
違う!
んなことは、どっちでもいい!!
あの野郎が、悪趣味な杖を俺に向けて水矢をぶっ放してきやがるので、ぶった切って消滅させる。
ビィトの野郎が驚いていやがるが、そんな人を殺す気もないような、舐めた水矢で俺が倒せるか!!
「熱っ!!」
ぶった切ったはずの水矢が沸きに逸れていき回廊に着弾したのだが、それはかなり高温で煮立っており、僅かに肌を刺す。
(この野郎───味な真似しやがる!)
殺す気はなくとも、ただで済ませる気もないようだ。
───それでも!!!
(舐めるな! このクソボケが!!)
次々に放たれる高温水矢をジェイクは避けもせずぶった切っていく。
身体に触れるのが不味いなら、
水矢を切ると言うより、剣圧で叩き潰す様にして、かき消すのだ。
そして、コイツの狙いは分かっている。
そうとも──わかってるんだよ、俺は!!
俺が捌き切れなくなって、躱し始めるのを狙っているんだろう。
だが、それが愚策なこともよーーーく知っている。
右へ左へ躱してみても、それはすなわちビィトによってジェイクの動きを制限ないし誘導されているという事。
ビィトの魔法の手数の多さと、種類の豊富さは言わずもがな───!!
水矢を交わしたところに、『小爆破』でもぶち込まれれば、態勢を崩して一巻の終わりだ。
つまりビィトの狙いはソレなわけで、
少なくとも、このくそボケの魔法くらい真っ向から対処して見せる!!
「どぉぉしたぁぁぁあ!! ヤル気のない魔法などで俺が倒せるかぁぁぁぁあ!!」
水矢水矢水矢水矢水矢!!!
迎撃迎撃迎撃迎撃迎撃!!!
「直撃したら死んじまうだろうが!! 出来るかバカ!!」
水矢水矢水矢───火球、水矢水矢水矢!
迎撃迎撃迎撃───迎撃、迎撃迎撃迎撃!
馬鹿め!!
火でも水でも同じだぁぁっぁぁああ!!
そして、次は──────!
ビィトの持つ杖が怪しく光る───。
やはりきたか、閃光での目くらまし!!
「読めてんだよぉぉぉぉおお!!」
どれだけお前と一緒にいたと思っている。
どれほど頭を悩ませて、お前をダンジョンで活用しようと考えたと思っている。
お前は、確かに努力の天才かもしれんが──────!!
「その運用を考えていたのは俺だぞ!!」
そうとも!
コイツの小器用な技をどうやって活用しようか。
どうやって組み合わせようか───。
全っっっっっっ部、俺が考えた!!
だから、ここで閃光をぶっ放してくることくらい知っている!!
クルリと刀を回すと刀身で目を保護するジェイク───!
「なッ!!」
魔法発動の直後に驚愕し、顔をひきつらせ声をあげるビィト───!
(バカめ!!)
代わりに反射光を受けて自爆して、目をくらませたのはビィトだった。
「ははは! 魔法に驕ったな──────ビィ」
ぬあ?!
突然、ジェイクの身体から重力が消える。
いや、違う──────!!
「俺だって読めてたよ!! ダメだろ……ジェイク! 戦闘中に視線を逸らすなんてさ───!」
こ、こいつ───?!
い、
「いつ、凍らせたぁぁぁぁぁああ!!!」
ツルーーーーーンと転んで空中で一回転するジェイク。
彼の目には、回廊の踏み場がツルツルに凍り付いているのが見えた。
いつ?
いつだって?
聞いておいて、
決まってるじゃないか──────。
閃光自体が囮───。
本命は、ジェイクが視界を隠した時に床を凍らせることだ!!
「終わりだ、ジェイクっ! ちょっと痛いけど、我慢しろよぉぉおお!」
メリメリメリ……。
ビィトが石礫を生成している。
いや、礫なものか!!
ありゃ巨岩だ!!
子供の頭ほどの石が礫なものか!!
だけど、
「喰らえッ!」
「喰らうかぁぁぁああ!!」
バシュ───! と放たれた石礫。
それは直撃コースならジェイクの膝ないし、腹にぶち当たるコースだろう。
そんなものを、
「大人しく喰らうわけがないだろうが!!」
───おらぁぁぁああ!!
パカーーーーーーーーーン!!!
単純に思いっきり蹴っ飛ばしてやったぜ!
お前の魔法は、よーーーーーーーーーーく知ってるぜ!!
「ぐ!!」
礫から巨岩に生成したため、石自体の密度が非常に薄くなっているのだ。
喰らえばただでは済まないかもしれないが、こうして、正面切って破壊してやればいいだけのこと!!
そして、狙いどおり!
破片から顔を庇うビィト。
(終わりだな──────!!)
はっはぁ!!
「───隙ありぃぃぃぃいいい!!」
着地と同時に、物凄い踏切と共に飛び出すジェイク。
速度、技術、体重、
そして、苛立ち──────!
それらを乗せて、ビィトの胴目掛けて刀を振り抜く……!
───……………………いや!
………………だ、ダメだ!!
ジェイクはすぐに違和感に気付いて、思いっきり飛び退る。
「ち!」
くそ! やっぱり狙っていやがった──!
そうとも、ビィトの野郎が石の破片ごときで顔を伏せるなんてありえん!
「やっぱり、
破片や矢をそらすための魔力の盾……。
そうとも、お前が破片くらい気にする何て、おかしいと思ったぜ。
チ……と舌打ちするビィト。
ビィトの手には小爆破の光が生まれていた。
なるほど、
あのまま突っ込めば、あれを踏み場にぶち込んで地雷とするつもりだったのだろう。
「───やっぱりジェイクは強いな……」
額に浮いた汗を拭うことも出来ずに、肩で息をしているビィト。
だが知っている。
……あれもブラフだ。
肩で息をしたいのはジェイクの方だ。
ビィトの野郎が、これしきの戦いで息が上がるなんて考えられない。
どうせ、身体強化で肺活量も心臓も強化しているのだから、まだまだ余裕があるはずだ。
つまり、汗もブラフ……。
(コイツ……。やはり手強い───)
相性の問題もあるのだろうが、ジェイクとしてはビィトに対する勝ち筋が見えなかった。
攻め手に欠けるということもあるし、なによりもジェイクの手数は、致命的に少ないのだ。
確かに、どんなデカいモンスターでも切り裂いて見せることができる。だが、所詮ジェイクは剣士───。
様々な技が、あるといえばある。
それらを剣技と謳ってもいいが、極論すれば斬撃以外にほとんど攻撃手段がない。
一方で、ビィトはどうだ?
魔法しか攻撃手段がないと言い切れなくもないが、その魔法が変幻自在!
水、火、氷、風、石、光、闇、電───!
さらには支援魔法や、神聖魔法等々、そして、やっかいなのはそれを組み合わせやがると言う事だ!!
オマケに無限に撃てるだと!?
「……お前の方が出鱈目だろうが!!」
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