第74話「なんてこった、キリがない!」

 下級魔法について、ビィト斯く語りき!!


 見せてやるッ!


 たかが下級魔法。

 されど下級魔法!


 魔法耐性が低いお前ら自身を呪うがいい。


「一歩たりとも、進ませないぞ!」


 トンッ……!!


 ビィトは勢いをつけて梁から降り立つと、今しがた凍らせたオーガの前衛を杖で薙ぎ払う。


 ガッシャァァァアアン!


 盛大に砕けた上半身。

 身体を失ったオーガの下半身が力なく膝をついた……。


 ───おあつらえ向けだな……!


 ちょうどいい感じの高さに下半身が残っていた。

 少々グロテスクだが、防壁を兼ねた銃座として使わせてもらおうか!


 ビィトは凍った断面に杖を置くと、銃座の様にしつらえる。

 杖の向く先は、当然オーガの集団。


 そして、無手の左手もあわせてオーガ集団に向けると、構えた杖と共に射撃準備は整ったッ!

 

「お、お兄ちゃん! オーガ、正面───数、……100体以上ッ!」


 了解、エミリィちゃん!


 スっと、声もなく自然にビィトの脇に立ったエミリィが、ビィトと同じようにオーガの残った半身を盾にしてスリングショットを構える。


 さらに、探知スキルを発動。


 忍びよる敵にも万全の体勢だ!

 エミリィのスリングショットは、遊撃と打ち漏らしを仕留めてくれる。


 そうとも、これが完璧なビィトパーティの布陣だ。



「攻撃───」

「開始ッ!!」


 オーガ集団の数は多いけれども、実質のリーダー格であったオーガスナイパーを沈黙させられ、次いで前衛もあっという間に鎧袖一触と、蹴散らされた。


 もはや、ビィトにとってオーガはゴブリンなみのデカイだけの雑魚にしかみえない。


「「「ぐるるる…………」」」


 全く怯まないビィト達をみて、ウジャウジャと集まり始めたものの、その後に詰めていたオーガが黙り込む……。


 ───ビビったら負けだぜ?


「歓迎会は、もうたくさんだ!!」


 凍りつけ───!!

 その鼻っ面に「氷塊」を叩き込んでやるッ!!!





 発射ぁぁぁああああ!!!!





 ピキ──────……!

 ピキキ、ピキキキキキイ───!!


 至近距離でしかも高速連射!


 まるで猛吹雪にでもなったかのごとく空気が凍り、冷え渡る!


「うらぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

 くーらーえーーーー!!


 ギュンギュンギュン! と青白い魔法が次々に高速連射ッ!

 接近中のオーガの集団に突き刺さる!


「ぐる…………?!」

「ごぁぁあ!?」

「ぐ……!!」


 狭い回廊を埋め尽くさんばかりのオーガの群れ!

 だが、そこに余すとこなくビィトの「氷塊」が突き刺さる!


「一歩も進ませると思うなよぉぉお!!」


 ───うらぁぁぁああああああ!!


 ズドドドドドドドッッ!


 着弾の度に白く凍り付いていくオーガ。


「ごああああ───ぁ……」


 即死には至らぬも、全身を凍り付かせればもはや脅威足りえない。


 そうして、危なげなく正面のオーガを氷像に変えるも、


 あ──────!


「やば!? こ、後続が狙えない!」

「まって! 私が破壊してみ」


 ガッシャァァア!!


「うわ!」「きゃあ!」


 エミリィが全身氷漬けのオーガの一体を狙撃してみる、と狙っていた矢先のこと。

 その判断は、オーガどもが僅かに早かったようだ。


 ───連中と来たら、凍り付いて邪魔な仲間を、思いっきり背後から蹴り飛ばしやがった!


 その破片が散弾となってビィト達を襲う!


「く!」


 慌てて「風の盾ウィンドシールド」を練り上げる。


 出し惜しみなしの、闇骨王の杖の補助を掛けた強力な盾を展開した。


 おかげで氷漬けのオーガの破片が貫通することはなかったが、これはたまたまだ。

 巨塊が直撃軌道になかっただけ。

 矢や石礫程度なら弾けても、下級魔法の「風の盾ウィンドシールド」では大粒散弾を完全に凌ぎ切るのは難しい───!


 魔法で逸らしたおかげで、エミリィも無事だが代わりに回廊がボロボロだ!


「お、お兄ちゃん! つ、次! 次が来るぅぅう!」


 くそッ!


 氷塊は効くけど、後続を倒せないと押し込まれるぞ……!

 こりゃ、なんとかしないと!!


「エミリィ! 俺が奴らを凍らせるから、すぐに撃って!」

「わかった!」


 ついでにいえば、全身を凍らせる必要はない。

 足等の支えを凍らせて破壊すれば奴らは姿勢を崩す。そうすりゃ背後の敵も狙えるって寸法だ!


 ギッチリと通路に詰まった状態で、叫びながら前進するオーガ!


 仲間の死体も何のその───。


 仲間意識が強いと聞くが、興奮状態のオーガには何の効果もない。


「いいぞ、いいぞ! どんどん、かかってこい!! 正面に出た奴はまとめて凍らせてやるぁぁあ!!」



 ズドドドドドドドドドドドド!



 ──おらぁぁぁぁああ!!!!!


 氷塊ッッ!

 もう一丁、氷塊!!


 氷塊、氷塊、氷塊、氷塊、氷塊、氷塊!!


 すぅぅ……───。


 氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊氷塊ぃぃい!!





 らぁぁぁああ───!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る