第55話「なんてこった、迎撃しないと!」

「殺せぇぇええ!!」


 うおおおおおおおおお!!


 いくつかに分散していたらしい「鉄の拳アイアンフィスト」の残りのメンバーが駆けつけてきた。


 盾持ちタンク複数。

 ボウガンに、弓矢装備が多数!


 あ、ありゃマズイッ!


 何がヤバいって?!

 ──そりゃあ盾持ちタンクだ!


 盾はヤバイ!──エミリィ先に行けぇぇ!


「エミリィ! 走って!」

「わかった! お兄ちゃんも早く!」


 わかってるよ!


 ボロボロになった背嚢から、アレを取り出す。

 ほとんどの物資がこぼれ落ちるか破壊された中で、それ・・は幸いにも無事だった。


「おい見ろッ、雌ガキが先に進むぞ!」

「いいほっとけ!! 奴は荷物持ってない──それよりも男だ! アイツを、集中攻撃しろぉぉお!」


 ダダダダダッ! と物凄い勢いで連中が突貫してくる。

 待ち伏せや罠があるかもしれないというのに、彼等は突っ込んでくる。

 さすがはAランクパーティと言ったところか。

 腹立たしいが、思い切りがいい。


 だけど、


「この、人でなしどもがぁ!!」


 熱ーーーーーい、お灸を据えてやる。


 くらえ、水矢────熱湯バージョン!


 ──おらあぁぁぁぁぁあああ!!!


 ──水矢熱湯

  ──水矢熱湯

   ──水矢熱湯

    ──水矢熱湯

     ──水矢熱湯


 無数の水矢を足止めと時間稼ぎにブチかましてやるも、

亀甲隊形ダイヤモンド!」


 盾持ちの一人が指揮官らしく、素早く隊形変換。

 全周防御の盾で水矢を防ぐ。


「ぐ────」


 非到死性の攻撃では盾を貫けないッ。


 殺す気で撃たないと、奴らの盾には効果がないらしい──……当たり前だ!


 ならば!まとめて高圧縮の水矢でギロチンにしてやるか?

 大理石すら貫くビィトの水矢なら、量産品の盾などバターのように切り裂くだろう。

 

 ……だが、それはできない。

 できるわけがない。


 ビィトは冒険者であって、兵士ではない。

 そして、人殺しなんて生まれて一度もしたことがなかった。


 魔物を倒すことはあっても、人を殺すことはできない。

 やりたくない。


 例え、それが悪人であってもだ。


 人が人を殺すのは、誰であってもやっちゃあならないと思う。


 それをやってしまえば────そんなのは人間じゃない! 鬼だ!


 そうとも……鬼になる。

 こいつら殺人鬼と同じ鬼になる!


 だから、切り抜けて見せるさ。


 一人も殺さず。

 ビィトもエミリィも死なず。


 誰も殺さずに、ここを切り抜け見せるさ!


「そんな子供だましが効くかぁぁあ!」

「ぶっ殺せぇぇぇええ!!」


 バシュン! バシュン!


 盾の隙間からボウガンで狙われる。

 それを「風の盾ウィンドシールド」の重ね掛けと、闇骨王の杖を使って魔法の防御効果を倍増し防ぐ。


 とはいえ、鉄の甲冑すら貫くボウガンは強力無比。


 掠る程度の射線を逸らすことはできても、直撃軌道は逸らせないだろう。


 ビュン、ビュンビュン!


 次々に撃ち込まれるボウガン。

 連射ができないのが幸いだが、一人で二、三丁の数。

 そして、あの人数!

 しかも連装ボウガンの数がやたらと多い!


 ──クソ!


 危ういところを掠めていくボルト弾。


 「風の盾」を重ね掛けしていなければ、貫かれているところだった。


 なんとか、第一波の連射を防いだものの。


 橋に向かって走り出すビィト。

 だがその姿は無防備に過ぎる────。


「一々狙うな! 面で制圧しろぉぉお!!」

 亀甲隊形を解いた「鉄の拳アイアンフィスト」の面々が、再装填した大量のボウガンを指向してくる。


 ジャキジャキジャキ!!!

 

 うお?!

 な、何丁あるんだよ!


 ──こ、これは躱せない!?


 し、死──────……。


「撃て────えぶしッ?!」

「「うぎゃああッ!」」


 指揮官が仰け反り倒れる。

 さらに、同時に何人もの射手も攻撃を喰らって沈む。


 こ、これは!?


「お兄ちゃん、早く!!」


 ッ!

 ──エミリィの援護射撃か!


 ナイスタイミングだ。


 ……しかし、なんだあれ?!

 一回の射撃で複数の射手を沈めたぞ!


 驚いて振り向いたビィトの視界の先には、スリングショットを構えたエミリィの勇姿が、

「お兄ちゃんに、手を出すなぁぁぁあ!!」


 もう一撃────!!


 エミリィが引き絞ったスリングショットには、複数のベアリング弾がのっている。


 ──す、すっげえ……!


 あれは、多段撃ちマルチショットって奴か!?


 バヒュ──────!

 連続同時着弾のベアリング弾だ!


「────ありがとうエミリィ! もう少しだけ、援護を頼む!」


 そ、そうだ!

 このまま中に逃げ込んでも不味い。


 是が非でも、コイツらを中に入れるわけにはいかない。

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