第37話「なんてこった、怒ってらっしゃる!」
「お、おおおおお、お兄ちゃん! い、今はそれどころじゃ!」
キョドりまくりのエミリィ。
その様子も中々可愛いけど……。
ビィトより足の速い彼女が、焦りを見せる表情で後ろを見ている。
走りながら後ろの確認なんて危ないったらありゃしない。
しかし、器用なバランス感覚で一見危なっかしい走り方でも彼女は転ぶどころかビィトを追い越し先行している。
「あぁ、わかってる! ……怒ってるよな?」
「う、うん……無茶苦茶怒ってる────ひっ!」
ズン、ズン、ズンズンズン!!
《グウゥゥウオオオオオオオオオオ!!!》
あああああ、わかるわかる!!
メッチャ怒ってらっしゃる!
はいはい! お怒りはごもっとも!
わかる。わかるよ、うん──。
だって、
尻尾は千切られるわ、
必殺のブレスは邪魔されるわ、
獲物は逃げ出すわ────そりゃ怒髪天だな。
骨だから毛が無いけど。
だけど、ビィトには多少余裕があった。
例の複合魔法が一度で成功したのだ。残りの魔法もうまくいくはず──。
「大丈夫だよ、エミリィ──仕込みは十分、」
ッッ────ズドォォォオン!!
いよっっっっし! ドンピシャ!
少し速度を緩めて背後を振り返ると────。
メリメリメリッ! と音を立てて柱が倒れていくところだった。
基部はすっ飛んでいき、どこにもない。
──それが連続して起こる。
ズドォォォン! ズドォォォォン!!
ズド、ズド、ズドォォォオオオン!!
「よっしゃ! ……て」
仕掛けた魔法によって一気に倒れる柱群。
爆破では、
そのため、当たれば儲けものと数で攻めたのだが……、
う、
「うッそだろ……!?」
テンでバラバラに倒れる柱。
それはいい。想定の範囲だが……。
《グウゥゥウオオオオオオオオオオ!!!》
バガァァン、ドゴォォン!!
「き、効いてない!?」
そう。
ダークボーンドラゴンの進路を妨害するべく倒した柱。その数は優に10本は越える。
中にはダークボーンドラゴンに直撃したものもあるというのに────!
「お、お兄ちゃん! す、すすすすごく怒ってるよ!!」
あ、ああわかってるって────!
ダークボーンドラゴンの奴、ブチ切れて大暴れの大暴走してやがる。
もうなんというか……。
手がつけられないとは、まさにこの事だ。
《ガァゥゥオオオオオオオオオァァ!!!》
──ズガァァアン!!!
倒れる柱は頭突きで粉砕し、背中に圧し掛かってきた柱は体を一振りし強引に振り払う。
《ガァゥゥオァァ!!》
進路を塞いだ柱は顎で噛み砕き、咥えると────。
や、
「やややや、やばい! ヤバイヤバイ!! エミリィ、外に出たら左右どっちでもいいから避けろぉぉぉぉお!!」
──ダークボーンドラゴンが柱の残骸をぶん投げた!!
ゴァガガッ、ガガガン! ガガガガン!!
骸骨で彩られた白亜の宮殿の壁と床と天井で激しくバウンドした柱の残骸が、ビィト達目掛けて飛んでくる!
──ひいいいぃぃ!!
し、死ぬ──────。
で、
出口ッッッッッ!!
「右ぃぃ!!」「左ぃぃ!!」
ビィトとエミリィ、どっちがどっちに飛んだやら。
壁がなくなり大穴の空いた出入り口から二人して別々に飛び抜ける。
そう、ギリギリ間に合った!!
ズドォォォオンン!!!!
壁をぶち破って飛び出す柱。
まるで爆発のように柱の残骸が宮殿から飛び出すと、外の────死者の町に爆音を轟かせる。
その先にいたのは、生き残りのダークスケルトンども。
《ギギギギギ──────ギ!?》
奴らが騒音に気付いて宮殿に向かおうと固まっていた頃。間の悪いことに、ちょ~うどそこに降り注ぐ巨塊が一つッ!!
《ギ──────ッ》
ズッッドォオオオオン!!!
パラパラ……。と誇りと破片が舞い上がる。
そのあとには、あっという間にバラバラに吹っ飛び跡形もなく砕け散った彼らも加わっていた。
威力だけで言えば大爆破を凌ぐだろう。
「ひ、ひぃぃぃ……」
「あぅあぅあぅ……」
宮殿から出たすぐ傍でビィトとエミリィはへたり込む。
今にもダークボーンドラゴン飛び出してきそうな穴を境にして、二人見つめ合いダラダラと汗を流してコクコクコクと頷き合う。
そして──、
に、
「「逃げるが勝ち!!」」
脱兎のごとく駆け出す二人。
だって、
「「き、きききき来たぁぁぁああ!!」」
《グウッォォオオオオオオオオオン!!》
ズドガァァァァアンン!!
宮殿の壁など知らんとばかりに突き破って死者の街に躍り出たダークボーンドラゴン。
奴はその巨体を思う存分振るうべく、体に纏わりついた柱や壁の残骸を、盛大に体を震わせて振り落とす。
そして、
突撃ラッパを吹き鳴らす──!!!
《ギャァァァァオオオオオオオオオン!!》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます