第34話「なんてこった、お約束って奴か?!」
「ダークスケルトンキングのバングル?」
バングル……。
腕輪──……よりも少し広め。手首ガードといったところだろうか?
拾い上げたバングルは酷く軽いものの、感触へ固く冷たい。
そして、黒い瘴気をうっすらと纏っている。
「古代文字……?」
そのバングルには気味の悪い細かな意匠が施されており、大きく古代の文字が刻まれていた。
詳しく調べないと読めないが、ダークスケルトンキングからドロップしただけに、なんらかの王族ないし貴族を表す文字なのではないだろうか?
これもうっすらと瘴気を纏っているが、どうやらここの装備品の瘴気は人体に影響はないらしい。
長時間身に着けないと分からないが、ダークスケルトンの棍棒を使っていたビィトには何ら悪影響は出ていなかったのである程度信頼していいだろう。
ならこの瘴気にはどんな効果があるんだ?
──わからん……。
とりあえず、悪影響はなさそうだし。呪いもないみたいだ。
どれ……。
──カチャリ。
無造作に、なんとな~く付けて見た。
着け心地は悪くないが、装備の効果は……よくわからない。
「ふむ……?」
ダークスケルトンキングから奪った杖はそのまま使えそうなので拝借しているのだが、その装備の質があまりにもよかったので、バングルも良いものだとビィトは勝手に思い────。
ゴトンッ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………。
「え?」
ゆ、揺れてる?
いや。
「お、お兄ちゃん!? 足場が──!」
え?
違和感を感じたビィトが視線を転じた所で──、
「うお!」
ズズズズズ……と、ビィトが立っている祭壇が階段を折りたたむようにして床に沈んでいく。
な、なななな、なんだこりゃぁ!?
ズゥゥン……!
地響きをたてて下がり切った祭壇。
「な、なんだよ!? ビビらせやが──」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
ビィトの強がりなど知らんとばかりに、突如──背後の行き止まりだったはずの壁がせり上がっていく。
「お、お兄ちゃん?」
「何かやらかしたかも……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ゴンッ。
──いやーーーーな、予感。
ゴクリと唾を飲み込んだ二人が恐る恐る、新しい空間を覗き込む。
その奥は更に暗黒の空間で、………………奥に爛々と光る瞳が──3つ。
「うげ……な~んか、ヤバいことしたかも」
そう、この一連の動きはビィトがバングルを腕に嵌めた時と同時だ。
つまりこのバングルを嵌めることがきっかけになって何かが発動したのだが……。
「お、お兄ちゃん? あ、あれ……」
うん、見えてる。
ヤ・バ・い・気・配・し・か・し・な・い
こう言う時は──!
「え、エミリィ────逃げ」
《グゥォォォオオオオオオオオオオンン!》
穴の奥から物凄い咆哮が響き渡る。
その衝撃だけで空間全体が揺れ動き、パラパラと柱から欠片が舞い落ちる。
「げ!?」
「ひぃ?! き、来た! 来た、来たよ!」
ズウン! ズゥン!
そして、言わずと知れず、奥の巨大な何かがビィト達めがけて突進してきた。
その威容に怯えたかのように、今まで淡く不気味に光っていたダークファントムの残照が完全に消える。
フッと薄暗がりに包まれる空間。
「あ、明かりを──!」
しかし、闇にはならない。
新たな光源が向こうから迫りくる!
三つに光る眼。そして体全体をボンヤリと青い光に包まれた────。
な、なんだあのシルエット?!
あ、あれは……。
ぼ、
ボーンドラゴン!!!??
そう、真っ黒に変色した骨の竜が物凄い勢いで迫りつつあった。
「ああああああ、あれはヤバイ!!」
「うううううん! なんだかよくわからないけど、に、逃げよ!?」
もちの、ろんです!!
ビィトは手近にあるドロップ品だけ急いでかき集める。
それくらいしないと、割に合わないが──……くそ! 時間がない!!
ズン、ズン、ズン!!
「くっそー! ひでぇダンジョンだ! 二度と来ないぞこんな所!!」
ダークスケルトンキングの冠と討伐証明になりそうな部位として、溶け残った下顎を拾うと急いで荷物をまとめる。
「いくよ! エミリィ! ────走って」
言うが早いか!ビィトはエミリィの足にも『身体強化』を施し、心肺強化のため肺等にも魔法をかけていく。
ついでに全身にも満遍なく────!
って、この杖、すげぇぇ!
効果もそうだが、魔法の発動速度も倍くらいはある。
何だこれ?!
「す、すごい!!」
ビィトから受け取った魔法の、その効果に早々に気付いてエミリィは目を見張るが、
「いいから、急いで!!」
2倍以上の魔力向上を図る杖は強力無比だ!
これを入手しただけでもかなりの価値があるが……。
いやさ、それでも最後の最後でボーンドラゴンとかどんなクソ厭らしい派生ダンジョンだよ!
誰がつけたかは知らないが、『石工の墓場』────なるほど、こりゃゴーレムたちのことを言っているんじゃない。
この哀れな壁の中の髑髏たちを指しているんだ。
誰も訪れないカビた墓所。
そりゃ、誰が行くかよこんなクソみたいな場所!
《グゥォォォオオオオオオオオオオンン!》
「うるせぇ!」
凄い勢いで迫りくるボーンドラゴン。……いや、例によって闇に染まった骨からして、ダークボーンドラゴンってことか!?
って名称なんてどうでもいい!
ありゃ勝てない!
無理無理無理!!
「走ってエミリィ!」
「うん! っていうか、お兄ちゃんの方が遅いよ!?」
わ、わかってるって!
「いいから先に行って、敵はまだいるから油断しないでね!──真っ直ぐ進めば奥に見える建物みたいなところに階段があるからそこで待ってて!」
「う、うん!」
心配そうに後ろを振り返るエミリィ。
確かに彼女の方が足が速い。そして、ここで別れてしまうとさっきの二の舞だ。
また見失ったらどうする?
だけど……!
あぁぁ、もう!!!
《グゥォォォオオオオ────》
「うるせぇぇえ!」
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