第32話「なんてこった、骨野郎と最終バトルだ!(前編)」


「──トドメだぁぁあ!!」


 ビィトは凄まじいラッシュを一度止める。そして、今度は思いっきり振りかぶって────。


 「連打ラッシュ」ではなく、


 

 「強打スマッシュ」だ!!



「はぁぁっぁぁぁあああああ!!!」


 死ぃぃぃ、ねぇぇええ────!!


 憤怒の形相で振り落とすビィト────だが、

《ギギギギギイギギ────!》


 ッ!!

 こ、こいつぅ!!!


 ────ピシャァァ!


 ゾワリ首筋に寒気が奔る。

 「何が?」と考える間もなく、ビィトは練り上げた渾身の一撃を取りやめ背後にバックステップ。


 せっかくの一撃ではあったが、……やばい予感がしたのだ。


《ギギーーーーーー!!》


 ボロボロの防御魔法をかなぐり捨てたダークスケルトンキング。

 防御魔法が剥がれ落ちていくように砕け散り、魔法陣が床に触れて消えていく。


 代わりに────!


 起き上がりざまに電撃魔法を放ってきたッ!

 ダークスケルトンキングの上に遷移していた小さな雷雲が光り、そこから一筋の稲光がビィトを襲う。


「ぐぁああ!」


 慌てて回避したが、光の速度に敵うはずも────。


 ッ!

 ピシャァァァァアアアンン!!!


 ダークファントムの残照だけが残る薄暗い空間が……。


 束の間真昼のように照らし出される。

 その光源は強力無比な電撃魔法からのもの……。


 電撃魔法『雷鳴』──。


 そいつは人間なんて簡単に蒸発させ、ドラゴンすらも黒焦げにできる威力があるという。


 それがビィトを襲ったのだ……無事なはずが────。


 散々ビィトに追撃され、防御魔法すら破られたダークスケルトンキング。


 ヨロヨロとなんとか半身を起こし、杖を頼りに起き上が──。


 あれ?


 その視線の先に……、

《ギ?》


「ってー……少し、痺れた」


 大荷物とエミリィを抱えたままのビィトが、五体満足な様子で立ち上がっていた。


 痺れたという手をフリフリ。

 そして、なぜか何も持っていない。


《ギ? ギギギギギギ──》


 驚いた(そう見える)ようにダークスケルトンキングが一歩下がり、そのままフワリと浮かんで空中に逃げようとする。


「ッ! 逃がすか!」


 ダッと肉薄したビィトはダークスケルトンキングの頭を鷲掴みにすると、そのまま倒れ込むようにして叩きつける。

 体重と荷物と勢いの付いた一撃だ!


 そりゃ、強烈だ!


《ギ──────!?》


 バキャーーーン!────盛大に叩きつけれたダークスケルトンキング。

 その頭蓋骨がミシミシと軋む。


 こうまでして密着されては防御魔法を展開しても、もう遅い。


「さぁぁて……どうしてくれようか!」


 左手で頭を押さえつけ、右手に拳を作り振り上げるビィト。

 その先には哀れにも拘束されたダークスケルトンキング。


 杖やら手や足でジタバタ暴れるも、ビィトの強化した膂力に敵わないらしい。

 ダークスケルトンキングは通常の戦闘もできるという噂だったが、話半分と言ったところか。


《ギギギ! ギ────》


「さぁて……まずは一発──────ん? あぁ、電撃魔法を喰らったはずなのに──ってか?」


 なにか言いたげな骨面に、ビィトは律儀に答える。


 ……そうとも、ビィトは確かに電撃魔法を喰らった。

 ほぼ直撃したかに見えたのだが……。


「驚いたよ。……まさかエミリィ諸共に攻撃してくるなんてね」


 そう、ビィトの誤算はダークスケルトンキングがエミリィを害さないようにするという思い込みがあった事。


 それが故に無茶な近接戦闘を挑んでいたのだが、ダークスケルトンキングとて自分が負けそうになる段階までそのポリシーを守るはずがなかったのだ。


 その油断を突かれるように不意急襲的な一撃を喰らう────いや、喰らいそうになった。


 だけど、

「城や、貴族の大きな邸宅には作ることがあるんだよ────避雷針、って言ってね」


 チョイっと指さした先、そこにはダークスケルトンの棍棒が────……さっきまでビィトが使っていた棍棒があった。


 地面に──いや、床に大きく盛られた氷塊に突き刺さった棍棒が高々と。


「雷は高い所に落ちる──だから氷で固めて即席の避雷針を作れば躱せると思ったんだけど……うまく行ったよ」


 シュウシュウと白煙を上げている棍棒だが……。

 まさかあの一瞬の間に?


 嘘だろ!? と言わんばかりにダークスケルトンキングがガクリと脱力する。


「さ! じゃー覚悟はいいかい? 俺は────」

 ニコリと笑い、



 ────怒ってるぞぉぉお!!!



 笑顔を憤怒の表情へ!


《ギギギギギ!?》


 ジタバタと暴れるダークスケルトンキングに振り上げた拳をぉぉお!


 ──振り下ろすッ!!


 途端に手に感じる鈍い感触。

 痛みは感じなかったものの手ごたえが薄いッ!


《ギ……ギ!》


「まだまだぁぁ!!」


 振り下ろす! バキン!!

 振り下ろす! バキン!!


 振り下ろす!!! ヴァキィィン!!



「まだだ。まだだ! まだだぁぁぁあ!!」


 あああああああああああああああああああああああああ!!! 死ねッ!


 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇえ!!


《ギ……ギギ……ギ!》

 なに? アンデッドだからもう死んでるって?


 ……知るかぁぁあ!!


 うおおおおおお────拳を振り下ろす! 振り下ろす! 振り下ろす! 振り下ろす! 振り下ろす! 振り下ろす! 振り下ろす! 振り下ろす!

 振り下ろす振り下ろす振り下ろす振り下ろす下ろす下ろす下ろす下ろす下ろす下ろすろすろすろすろすろすろすろすろすろおろすロスロスロスロスロスロスロスロォォぉぉおおおス!!



 強打スマッシュからの連打ラッシュ!!


 連打ラッシュ連打連打ラッシュラッシュ連打ぁぁぁあラァッァアッシュ!!





 ──ラァァァァアッシュ!!

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