第32話「なんてこった、骨野郎と最終バトルだ!(後編)」
「くたばれぇぇええ!」──ラァアッシュ!
ガガガガガガガガガガガガ!!
ガンガンガガンガガガカン!!
ビィトの強化された拳がダークスケルトンキングの頭蓋骨にめり込む。
最初は多少の抵抗を感じていたものの、いつの間にかシャーベットでも殴っているような感触に。
見れば──鼻底骨陥没、上顎粉砕、眼底骨陥没……────要するに、ダークスケルトンキングの顔面は拳の形にめり込み、砕けていた……。
《ギ……ギギギギギギギ……》
だが、コイツらはこんなものでは死なない。
しぶとく腕を動かし、あの不気味な杖を振り上げようとする。
こいつらアンデッドの魔術師は、無詠唱で上級魔法すら行使する凄腕だ。
チ……!
また電撃魔法で使おうってのか?
そうはさせるかッ!
奴の腕を、振り上げた杖ごと掴むと、
「──人の物に、手ぇ出す手癖の悪いのは──────これかぁあ!」
メシャぁぁ……!
《ギギ──────》
力任せに腕ごとつかみ取ると思いっきり捻り上げる。
瘴気が手に絡みつくが……、構うものか! と言わんばかりにビィトが力任せに引っ掴む。
その強化された握力と腕力に、骨だけで抗えるはずもなく簡単に折れ千切れるダークスケルトンキングの腕……。
それをそのままに、杖を奪い取ると、
「とっと地獄に行けぇぇぇ!!」
奴の体を押さえつけていた左手をずらし、少し上にある頸椎を掴みかかると、腕と同じく捻り上げていく。
ギリギリギリギリ……!
《ギ! ギギ──────》
自分の首がどうなるのか気付いたダークスケルトンキングが、より一層暴れるも────。
「ここはダンジョン……『地獄の釜』だ────安心して直行便行きだぜ!」
うらぁぁぁあ!!
ビィトは容赦せず奪った杖を顔面に押し当て、左手を支点にしててこの原理でダークスケルトンキングの頭を──……ボキィィ!!
引っこ抜いた!
《ギ──────》
さすがアンデッド。首がなくなっても体は未だジタバタと暴れ回る。
これはやはり、ダークファントム並みの物理への鈍さ……。
だが、それもここまで。
「これが防げるかぁぁあ!?」
捥ぎ取った頭部に手を当てて内部に「水矢」を生成──しかも、聖水入りだ。
それだけでブスブスと浄化の煙を上げるが、流石はアンデッドの王。
そう簡単に浄化されない。
生き汚さだけは超一流。
だが────。
「浄化のフルコースだ!!」
「水矢」を「氷塊」へ!
陥没した奴の骨が内側に生まれた氷で盛り上がり、一見して元に戻ったように見えるも──。
ビィトはそこに奪った杖を押し当てる。
その杖──赤く濡れた頭蓋骨と目には宝石……。
見るからに不気味な杖だ。だけど、…………何だこの杖?!
────無茶苦茶魔力の通りがいいぞ!?
威力も桁違い。発動までの時間も早い!
さすがはアンデッドの王が後生大事に抱えていたもの。
並みの杖じゃない。
その杖をグググと押し当て、
「聖水いりのアイス……最後のデザートだ!」
──ゆっくり味わえぇえ!
そして、食らえ──────、
「氷ってのはなぁあ!! 光を反射しまくるんだよぉ!!」
ただの氷付けにすると思ったか?!
甘いっつーの!
氷はプリズム替わりだ。
内部から焼かれろぉぉお!
──『破邪の灯』発動ッ。それをぶっ放す!!
ッッ────カッ!!
奪った杖は魔力の通りがやたらと良い。
しかも……。
(うぉ! ……魔力が増幅されている?!)
グググ……と体内から魔力が絞り出される感覚があるが、その分、杖を通して魔法の発動効率が高い。
威力換算にして通常2倍近く強力になっているんじゃないか!?
なんて杖だよ……!
ボフッ……!! その強化された神聖魔法を喰らったダークスケルトンキングの頭部が眩い光に包まれる。
ピカーーーーー!
目や鼻、そして口やら他の空いた穴という穴かから光を溢れ零している……──なんていうか結構幻想的。
ちょっと、カッコイイじゃないか……!
だが、それはアンデッドからすれば味わったことのない黄泉への誘う聖なるの炎だ。
焼かれる苦しみは彼らにしかわからない。
首から離れた体がジタバタと暴れていることからも相当な苦痛なのだろう。
(──もう、いいだろ……?)
────終わらせてやる……!
とっと逝けッ!
杖にブッ刺したままビィトは空いた手で火球を生成。
火力最大、魔力充填────熟練度によって練り上げ整形し────豆粒のように小さくなった超高温の『火球』。
そいつをダークスケルトンキングの眼下にぶち込んでやった。
「逝け! 聖水サウナと浄化の光のコラボレーションだ!!」
ピカピカーと浄化の光を放つダークスケルトンキングの顔面の──さらに内部にスポンと火球が飛び込むと、ブシュゥゥウウウ!!!──と高温、高蒸気が溢れ出す。
ただの蒸気ではない。それは、浄化作用のある聖なる蒸気だ。
あっという間にダークスケルトンキングの頭部は水蒸気で満たされた。
そして、ビィトの視界もまた蒸気によって閉ざされる。
濛々と視界を覆う湯気。
「熱ッ! あっちち……!」
「お兄ちゃん……?」
やば……! エミリィが目覚める。
クソ早く……死ねェ! 骨野郎!!
濛々と立ち込める蒸気はすさまじい高温だ。そこにブッ刺した杖にも熱湯となって雫が滴り落ちてくる。
あっつ!!
だが効果は上々! 浄化の光は内部の水蒸気に閉じ込められたかのようにダークスケルトンキングの頭部を蒸し焼きにしていく。
さらには蒸気に含まれる聖水の成分が奴を溶かしていく。
《──────ギ……》
ボロォ……と、頭部が崩れ落ちていく。
黒い骨がドロリと液状になったかと思うと、一瞬恐ろしげな表情を作ったのち……ボロボロとドロドロと崩れて消えていった。
そして、
カラーン♪──と、ダークスケルトンキングの被っていた冠が涼し気な音色を立てて転がる。
未だ空間を照らしているボンヤリと残るダークファントムの残照。それを受けて、嵌っている宝石がキラキラと輝いていた。
カラン……カランカラン……カラララララ、カラン──♪
冠が踊り、そして…………鳴りやむ。
それと同時に暴れていた体もパタリと動きを止めた……。
た、
倒した?
シュウシュウ……と蒸気だけが立ち昇っていたが、それもやがて拡散していく。
そして無音の世界が訪れ。
ダークスケルトンたちは駆逐された。
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