第19話「なんてこった、変なドロップ品ばっかり」


 ホールから繋がる部屋を捜索しようとしていとビィトの前にはダークスケルトンの残骸が6つ。


 バラバラに飛び散った骨のなかに、いくつかのドロップ品が落ちている。


 どれもこれも趣味の悪い骨の製品ばかりだ。

 一部では書物の様なものも出たけど……。何だこりゃ?


 ダークスケルトンの弓、

 ダークスケルトンのガントレット、

 ダークスケルトンのナイフ×2、

 ダークスケルトンの棍棒────つーか大腿骨?

 解読不能の古文書


 以上の6点。


 弓はしっかりとしたつくりで、要部には骨が使われているが、複合素材で作られているらしく意外と良くしなる。

 弦は何らかの動物の腱だろうか?


 ビィトには弓の心得がないので、使ったところで命中は望むべくもないだろうが……。あるいはエミリィなら使えるのだろうか?

 スリングショットを器用に使いこなす彼女の腕前を見ているとなんとなく飛び道具との相性が良さそうだ。


 一応回収すべきだろう。


 荷物にはなるが、呪いの有無を確認した後エミリィと合流したなら装備に加えてもいいかもしれない。

 

 あとはナイフ。予備に一本くらいあってもいいか。

 ……ガントレットはさすがに使えないな。放置。

 そして、棍棒…………。


(ふむ……俺の杖の代わりになるかな?)


 趣味の悪い作りだが、意外と手触りはいい。それに驚くほど軽い。


 見た目はまんま、黒い骨。

 その大腿骨の部分を持ち手にして、中間部分で他の骨と固定。弓と同じ素材で複数の骨を束ねてインパクト部分を強化している。骨と骨で作ったオール骨のこん棒だ。


 ……凄い見た目。

 こんなもん街中で持ち歩けないな。


 『鬼畜ロリコン』からどんな二つに進化するやら……。


 って、鬼畜ちゃうわ!

 ロリコンちゃうわ!!


 『器用貧乏』です!──ってこの二つ名も実は好きじゃなかったのに……。


 うん、もういい。


 若干開き直った様子で棍棒を手にすると、念のため神聖魔法の『解呪』を駆けて見るが、とくに目立った反応はない。

 もし呪いが掛かっているなら何らかの反応があるのだが……。

 いや、どうろだろう。わからないな。


 ビィトが扱えるのは所詮、下級魔法。広く浅くだ。

 解呪に反応しないからと言って安易に判断すべきではないだろう。


 それも、かなり下層にある派生ダンジョンで手に入れたドロップ品。しかも、スケルトン最上位種から入手したもの。

 間違いなく、高位の装備品だ。


 ダークスケルトン自体は脆い骨だったが、この装備はその脆さとは無縁らしい。

 手触りだけでもかなりの硬度があることがわかる。

 魔法的な処理が施されているんだろうな。


 うっすらと瘴気の様なものも纏っており、禍々しい雰囲気。

 仮に呪いがかかっているなら、下級魔法ではどうにもならない。


 本腰をいれて解除する必要があるだろう。


 ちなみに、解呪の方法はいくつかあるのだが、それなりに時間がかかる。

 ちょっとした隙間時間でできるものではないので、後回しにせざるを得ない。


 だが、いざという時に近接武器がないのはビィトとしても困るので一応回収さておく。


 あとは……古文書。


 これも、まぁ仕方ない。

 ビィトには読めないけども、売り込みにいく場所によっては、凄まじい値がつくことがある。


 もっとも、そんな品は早々出ないけれども。

 あまり期待はしていないが、何かに使えるかもしれないから回収する。少なくとも種火付けにはなる。


 結局、ガントレットを除いて他は回収した。


 ナイフと棍棒はビィトの装備に追加。

 ただし、装備はせずに荷物に括りつけるだけ。呪われてたら事だしね……。


 他に弓とナイフはエミリィ用。

 これでエミリィはナイフ二本持ちになるが、どう扱うかは彼女に任せようと思う。

 そもそも装備できるかわからないしね。


 そして古文書は換金または火付けにしよう──と。


 こんなもんか?


 のんびりと回収しているようで、ビィトはしっかりと周辺警戒を怠らない。

 エミリィのようにスキルが使えないので、強化した五感頼りだが、この沈黙の空間では聴覚だけでもバカにならない。


 その耳が捉える音は、複数のスケルトンらしきものだが、かなり距離があるようで、今のところ特段警戒が必要ではない。

 

 とはいえ、階段の先から聞こえてくることからも、相当な数のダークスケルトンが先に待ち構えていることを指していた。


(ほんとに対策を考えないと、この先は厳しそうだ……)


 しかし、特段ビィトに考えは浮かばない。

 いっそ諦めたいところだが、それはできない。──エミリィを置いていくなんて絶対できない!


(聖水がもつといいんだけど……)


 すぐになくなるほどではないが、この先を考えるとここで使い切るわけにはいかなかった。


 ホール外の部屋も調べたものの、先に調べた部屋と同様に、石棺が安置されており、やはりぐずぐずになった装備があるのみ、これも飾り石だけを回収した。


 そして……やはりエミリィはいない。


「待っててくれ、きっと見つけてみせる!」


 ホールを後にしたビィトは先を目指す。






 規模も、敵も、エミリィの居場所も全く分からない中、石工の墓場に封印されていた墓所の奥へと……。

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