第5話「なんて言うか、依頼を受けよう」
カララン♪
本日二度目のギルド。
相変わらず冒険者でごった返している様はいつ来ても変わらない。
繁忙時期を過ぎても、暇な奴やら、来るのが遅い奴やらでとにかく騒がしい。
「話し終わったかな……?」
そっと、ギルドの奥を覗き込むと、ギルドマスターがいる部屋の扉は開け放たれている。
彼の方針かどうかは知らないが、来客中や会議中、あるいは用務で不在にしているとき以外はギルドマスターは扉を閉めないらしい。
つまり今は、彼が中にいてかつ、会議などは行っていないということ。
既に「
そのことに気付いたビィトは落ち着かない様子でギルド内をうろつき始めた。
「お兄ちゃん?」
ブカブカのローブを纏ったエミリィがチョコチョコと付いて回る。
「う、うん……。捜索関係に
とはいえ、
Sランクパーティの捜索だ。
Cランク程度のエミリィには受けることなどできるはずもないし、ましてや仮免許のビィトにお声がかかるはずもない。
どうしたものか……。
せめて、遭難した最新の情報があればある程度の辺りはつくのだが……。
ウロウロと掲示板を見て回ったり、雑談をしている冒険者の話に耳を傾けているのだが、あまり有用な情報はない。
こういったときどうすればいいのかイマイチ──。
「お兄ちゃんその──……」
困り果てたビィトの様子を見兼ねたエミリィが、
「ギ、ギルドの人に話を聞いてみないの?」
んん?
いや、無理だろう。
だって俺、仮免許だし……。
「と、取りあえず、お話だけでも聞いてみようよ?」
エミリィの提案はもっともであるのだが……。
ビィトはここ最近のギルドの扱いの冷たさと雑さと、その他諸々によって窓口恐怖症になりつつあった。
とくに……、
「そんなとこで何ぼんやりしてるんですか」
うわ、出たよ。
「なんですか? その「うわ、出たよ」って顔は──」
「て、テリスさん。その、」
コイツ苦手……。
エミリィが取りなすようにギルド受付嬢のテリスに話しかけてくれている。
一方でビィトは顔を引き攣らせて、テリスを直視しようとしない。
だって、この人苦手なんだよ。なんか俺に対してやたらと当たりがきついし……。
「あら、エミリィ? ご飯食べてきたの?」
「は、はい! いっぱいお兄ちゃんに奢って──……あ、お金は私が出したんだっけ?」
う……。
「うわッ。女の子にタカるとか、さいてー」
うっせーよバーカ。
ほっといてくれ……。お金のことは俺も地味に悲しいんだよ!
「え、えええ……っと。でも、元々はお兄ちゃんと稼いだお金だし──」
「エミリィさん。悪いことは言わないから、こんな甲斐性なしの、ド助平&器用貧乏でロリコン野郎とは縁を切りなさい。これは親切で言ってるの!」
余計なお世話だ!
「えええ?! で、でも、私はお兄ちゃんの奴隷だし……」
余計なこと言わないの!?
「奴隷!? まだ、開放されてないの!? あ、よく見たら首輪ぁぁ!? ……この鬼畜野郎ッ」
ここでスッゴイ目で睨まれる。
いやさ、その首輪ベンから貰ったやつだし!?
しかも、つけてるのはエミリィの意思よ?
俺、何も言ってないよ!?
マジでよ!
「エミリィさん! ホント悪いこと言わないから、この鬼畜貧乏ロリコンと縁を切りなさい!」
って、ちょっとぉぉぉ!?
器用貧乏ですらないし!
鬼畜貧乏ロリコンって、そんな業の深そうな生き物いないって! ……多分。
って、もうーーーーーーーー。
「──話し進まないから!!」
ここでようやくビィトがテリスに話しかける。
聞こえていたし、傍にいることも知っていたくせに、まるで今気付いたかのように振る舞うテリス。
「は? なんですか? 鬼畜貧──んんッ……こほん。……仮免許さん」
いや、鬼畜貧乏ロリコンって言おうとしたよね?
仮免許さんも大概ですけどぉぉ!?
……鬼畜貧乏ロリコンより万倍いいな。
うん、幸せLv下がってるね。
「……はい。仮免許でいいです。それより、」
「なにか?」
ギロリと凄い目で睨まれる。
なんで一々威嚇すんのよ!
「あー…………
ジロッ。
「…………」
ないよね。
「あるわよ」
「──ごめん、聞かなかっ──え? なに??」
ん? え?
「ある、って言ってんのよ」
ま、マジで?!
「緊急捜索から特殊捜索案件に切り替わったわ」
「????」
はぁ、とかため息をつかれる。
俺が悪いのか?
「元
はぃ??
「えっと、」
「断ってもいいらしいわ。マスターもそこまで期待してないみたいだし」
──数打ちゃあたる、そのうちの一本ってだけよ。
と、テリスは続けた。
「彼らが遭難した地区のおおよその位置は判明したわ」
だけど、
「そこに到達したパーティはまだ、ほとんどいないのよ……腹立たしいけどね」
いや、なんで腹立たしいのよ?
「うち、到達したパーティは今回の
「──現状、そこに知見があるのは俺だけ?」
「チ……。そうなるわね、で──」
一拍おいてテリスは続けた。
「ギルドからの直接指名かつ特殊依頼────受ける気はあるからしら」
フンッと、そっぽを向いて、目を会わせないテリス。
ビィトが指名されているのが気にくわないらしい。
だけど、テリスの態度はこの際どうでもいい。
俺の心は既に固まっている────。
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