第30話「なんか川辺で食事しました」
ゴブリンの体臭が漂う最悪の環境で数時間。
川の中に化け物が潜む場所で一服───と言う、中々にシビアなシュチュエーションだ。
そんなリバーサイドビューで優雅に休憩、
連れは可愛い女の子───と中々洒落ているが、
禿げでデブのオッサン付き……しかもそれがご主人様と来た。
「おら、メシだ…」
しかも食事つき───どうだい? いい勤務環境───……なわけねぇだろ。
「ありがとうございます!」
エミリィは礼を言ってメシを受け取っているが…例によって、カビの生えたパンだ。
それにドライフルーツが一握り。それだけ。
ベンは特別に柔らかいパンに、塩漬け肉。ワイン付き。
をい!
なんだこれは……
しかし、奴隷生活初心者のビィトにはわからないが、エミリィは
むしろドライフルーツには目を輝かせている───ベンにしては奮発したというところなのか?
……荷物を担いできたのはビィトとエミリィではあるが。
なんにしても昨日から食べていない。
食わないとさすがにもたないか……
恐る恐る口にすると想像通りの固さとカビ臭さ。
腹を壊すこと間違いなしなので、回復魔法と解毒魔法をこっそりかけておく。
基本、下級の魔法は一通り使えるので問題ないだろう。
魔力の消費もほとんどない。
「食べる?」
パンを水で流し込むと、ドライフルーツを一つ二つ齧って口の中の後味を消すと、残りはエミリィに差し出した。
「いいの!?」
途端にキラキラとした目で瞬足の反応。
──お、おう……凄いテンションでちょっと引く。
「おーおー…ガキを口説いてやがるぜ、一丁前に──」
と、ベンがニヤニヤと
「く、口説く…!?」
エミリィはエミリィで急にモジモジ……違うからな!
「ただの
なんとなくつかれた気分でエミリィにフルーツを押し付けた。
エミリィは、それを聞いてショボンとしてしまったようだが、フルーツは貰うようだ。
小動物の様にチマチマと口に運んでいる…可愛い。
「そろそろいいんじゃないか?」
ベンが
空はー、と言えば太陽はピクリとも動いていないので、このダンジョンでは夜の概念がない空間だと理解できた。
だが、ゴブリンの活動が低調になる時間は確かにあるらしい。
「そうみたいだね」
ビィトも同意しつつも警戒は解かない。
その時、エミリィが、
「待ってください! 一匹こっちに───」
その声が止むと同時に、フラフラと酔っぱらった様子のゴブリンが水辺に近づき、川に頭を突っ込むとガブガブと直接飲み始めた。
川の
とは言え、今更身を隠すこともできずに凍り付いたように固まるしかなかった。
今のところゴブリンは気付いていない。
まさかこんなとこにいると思っていないだろう。
うまくすれば、案外気付かないかもしれない……
が、
ヒョイと何気なく振り向いたゴブリンと目が合う。
ビィトだったのか、ベンだったのか、エミリィだったのかは知らないが確かにゴブリンと目があった。いや全員か……
途端に目を見開き、声を上げようとしたゴブリン。
その顔は嬉し気に
が、
ザバァァン!!
と、水辺で盛大に
ブチンと胴体を食い破り水に引きずり込んでいった。
その間、一瞬のこと───
残ったのはニヤァァと笑ったまま凍り付いた頭と、
足だけ……
今さらながら、残った首から血がブシュウと噴き出す。
……
…
シンと静まり返った水辺だが、次に瞬間。
ゲギャ! ゲシャアア!
ギギギギィィ! ギィ!
と甲高い声でゴブリンどもが水辺に殺到し、死んだ仲間の頭と足を奪い始めた。
気の早い奴はもう首の傷口にかぶり付いていやがる───
「共食い!」
「おえ……なんて連中だよ!」
「ひぃぃぃ……」
三者三葉、驚愕しているが、おぞましいほどの食性だ───だが、それが自分たちに向くのはほんの数秒後。
いつの間にか
……って! やばっ!?
見つかった!??
「「「逃げろ!!」」」
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