第18話「なんか換金できました」
山積みになったドロップ品を前にビィトは端と考え込む、
───外で売りたいのは山々なんだけど……
「全部換金してしまおう」
え? いいの?? と、エミリィは疑問顔だ。
ドロップ品はギルドで纏め売りと、外に出ての持ち売りの2種類がある。
町売りの場合は少々手間が掛かるし、個々の専門に行く必要がある。
その点ギルド纏め売りなら、───安さがネックだが、利点もある。
まず、なんといっても手間要らず、
さらに、ギルドに貢献したとしてランクがあがりやすくなるのだ。
もっとも、ランクの上昇の基準は単純に貢献だけではなく、本人の実力も大きくかかわってくるので、一概には言えない。
だが、この場合外で売っても、ここで売っても…ベンに巻き上げられるのが目に見えている。
とくに外で悠長に売っている暇などない……
その点、ギルドなら───
「あと、金はこの子の口座にいれておいてくれ」
「え?」
エミリィが驚いた眼で見る。
「でも、お兄ちゃんのじゃ…」
「おれ、カードがこれだからさ」
寂しそうに仮登録カードを振るビィトに、エミリィがあいまいな顔で笑う。
「あ。あはは…でも、元Sランクだし…」
「たまたまだよ」
そう、たまたまだ。仲間が強かっただけさ───
「はぁ、それはいいですけど…」
テリスに
「そのままの金で持っていてもベンに巻き上げられるからさ……」
そうだ……ベンならやりかねない。
それくらいなら、ギルドの口座に預けたほうがいいだろう。
さすがにベンとは言え、奴隷とはいえ他人のカードを使って堂々とギルドの口座から金を引き出したりしないだろう。
それになんといっても、
一応とはいえ、エミリィの身柄はビィトの所有物扱いだ。
間接的にビィトからエミリィへ金を出す様に指示を出すかもしれないが、それはビィトが防げばいいだけのこと。
呪印で縛られても知った事か。
「うん。でも、…お金はお兄ちゃんのものだよ」
「あぁ、ありがとう…二人で稼いだものだ。平等に分けよう」
……
「話ぃ、
そろそろ決めてくれと言うオーラを出されると、ビィトとしても早めに答えねばならないと思い、
「あぁ、ここで換金してくれ。お金はこの子の口座に」
「あーはいはい」
ビィトのことをよほど下に見ているのか、適当な扱いだ。
それでも、事務的に手続きをすませると、エミリィにカードを返却する。
「全部で銀貨4枚、銅貨28枚よ……今のをあわせて、残高もほぼ、同じなんだけど───」
貯金してないの? とテリスは不思議そうだ。
「は、はい…ベンさんに取り上げられてたので、今までドロップ品なんて…」
まぁ、ベンがそう簡単にくれるわけないわな。
「で、でも、今日はお兄ちゃんが物凄く早くクエストを達成したので、換金できました!」
聞けば、いつもは夕方遅くになるとベンが奴隷の帰還を見越してギルド前に張っているそうだ。
あとは労せず、ドロップ品を巻き上げて換金してしまう。
いくら拾った者に所有権があるとはいえ、奴隷のそれは非常にあいまいだ。
他人の奴隷ならいざ知らず、自分の管理している奴隷の物を奪ったとて、誰が文句の声を上げようか…
そのため、ドロップ品の所有権───など、奴隷にはあって無きの如しルールと言うわけだ。
「そ、そう…よかったわねエミリィさん。……チッ」
ビィトを見て忌々しそうな顔のテリス。
なんでそんなに威圧的何だろう…
ジロリと睨むテリスは、
「エミリィさんに手を出したら承知しないわよ」
「あと、ベンは死ね」そう言ってテリスはさっさとドロップ品を奥へ運んでしまう。
その間、窓口から離れるものだから、暗にもう取引は終わりだと言われたようなものだ。
実際要件は終わった。
あとは、ベンに報酬をくれてやるだけだ。
癪ではあるが、しかたないこと。
それでも、エミリィのお陰で気持ちはそれほど悪くはない。アリの巣で得た、ちょっとした食べ物もある。
人ごみを避けてギルドを出るころには、すっかりと陽が落ちていたが、冒険者相手の街はまだまだ眠る様子はない。
ビィト達はとても近い距離を寄り添うように歩いていく───
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