第12話「なんか群れに遭遇しました」
「よし! 行こうか!」
「うん!」
息のあった様子で頷きあう二人。
一気に加速するビィト、
エミリィも遅れることなく追従。盗賊だという彼女の脚力はビィトと遜色ない。
「元」とはいえSランクのビィトに着いて来れるのだから、エミリィの腕は、Cランクと言ってもかなり高そうだ。
魔術師とは言え、腐っても元Sランクのビィトと一緒に行動できるくらいには…だ。
足早に近づくと、ラージアントの群れは地面の振動を察知したのか、群れを止めて威嚇の声をあげる。
どうやら、ビィト達を警戒しているようだ。
眼はあんまりよくないと言うが、優れた触覚のおかげで感知能力は高いらしい。
「群れの先頭は───あそこか!」
ラージアント群れを叩く時に
下手に中央に突っ込めば取り囲まれるからだ。
もっとも、それすら物ともしない
「エミリィ! 援護を頼むっ」
「え? う、うん?」
今のビィト達の編成は非常に変則的な物だ。
通常のパーティは3~4人がベストとされる。
近接職、
中・遠距離職、
援護・回復職、
遊撃・警戒職、
───と隙のない編成を組むのがベストと言われる
もっとも、あくまで理想的な───といわれているだけで、必ずしもこの編成が良いとは限らない。
実際にはソロの冒険者も多くいるし、近接職だけのイケイケパーティもあったりする。
「
───ビィトの微妙な魔法を除いて…であるが。
それらの編成から考えると、
今のビィト達は、近接職や援護・回復職に欠く決定打に乏しい編成と言える。
そのため、
普段から雑用などをこなしつつ、ダンジョン浅層ではパーティの温存のため、主にビィトが戦ってきた経験を踏まえて───
一人で近接職と中・遠距離職、援護・回復職をこなすことにした。
だから、エミリィの仕事はひとつ、遊撃・警戒職として、ビィトの取りこぼしや、敵の包囲を警戒してもらうこと。
それを目配せしただけで無理やりエミリィに飲み込ませると、
ビィトは一気に
「まずは───」
先頭の一匹!
下級魔法とは言え、雑魚モンスターくらいなら楽勝だ。
焦らず確実に仕留めることに集中すればいい!
「お兄ちゃん!?」
いきなり突っ込んでいくビィトにエミリィは驚いている……が、それでも追従してくれた。
さすがに「
地上での雑魚モンスターくらいには驚かない。
ボンッ! と左手に魔法の炎を生み出すと、無詠唱で発射!
───下級炎魔法の「火球」
来る日も来る日も下級魔法ばかり使ってきたので、息をするかのように行使できる。
《ギィィィィ!》
命中した蟻が断末魔の悲鳴を上げてあっという間に燃え堕ちる。
昆虫系の魔物にとって炎は弱点なのだ。
「大丈夫! 速射には自信があるんだ」
実際、下級魔法を使いまくったおかげで殆ど意識せずとも使えるまでに上達。
さらには、熟練度が上がりまくったお陰で魔力の消費もほとんどない。
▽
(お箸を使い慣れている人が箸を使うような感覚にちかい。
つまり、意識などせずとも扱える。
逆に箸を使い慣れていない人が使えば、精神も体力も無茶苦茶消耗するのが分かりやすいだろうか。)
△
同時に、懐からナイフを抜き出すと魔力の熱を与えて魔法剣がわりとする。
「さぁ来い!」
さらには、挑発してヘイトを集めることでエミリィへの興味を逸らす。
「す、すごい……」
一応、援護位置についているものの、エミリィのすることは今のところない。
ベンから貸し与えられている護身用のナイフを構えてはいるが、取りこぼしどころか───ラージアントは迂回包囲すらできない始末。
信じられないことに、ビィトは先頭のラージアントを
ボンボンボンボンボン! と途切れることのない火球は、次第に近くから遠くへ……発射感覚も長くなっている。
だがその分、命中率が抜きんでている───次第にうず高く積みあがっていく蟻の死体も段々と少なくなり…
そして、途絶えた。
「……終わりかな?」
最後の数匹は恐れをなしたのか、
虫とは言え恐怖心はあるようだ。その背中に追撃の魔法を何発か撃ちこみ……最後の一匹を除いてラージアントの群れはあっという間に殲滅された。
「あとは、
いくよっ───そうエミリィに声を掛けると、ポカンとしている。
「どうしたの?」
「い、いえ…その……」
??
「あとは
「は、はい!」
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