第5話 フルット
「合格者3名お連れしました」
「まずは合格おめでとう。
私はエスペランサ。この組織の幹部をやっている。早速だが、君たちには怪盗になってもらう」
ぶっきらぼうな言い方だか不快感はなく、むしろ心地良い。貫禄がそれを可能にしているのだろう
「怪盗?俺たちが?」
「ギーア‘また’何も説明していないのかね?」
「その方が面白いと思いまして」
状況と声から察するに、試験中の指示はギーアが出していたと分かる
白と黒のシルクハットと仮面が特徴的だ
「まったく…しかたない。フェデル説明を」
「わかりました」
「はじめまして。私は、あなたたちの担任となるフェデルと申します」
「担任?」
「はい。この怪盗団には幾つものグループがあります。そして、全てのグループにはフリードという怪盗上級ランクの者が担任として1人着くことになっっているんです。 続けますね」
ここはフルット【心の世界】
『心の霧を晴らす』それが私たち怪盗の役目です。
そして、あの試験は怪盗の素質を計るものなのです。知力・適応力・応用力そして曇り無い夢。
それら全てを持ったものしか怪盗になることは出来ないのです。
「ちょっと待てよ。心の世界?心の霧を晴らす?
訳わかんねぇことばっかり言ってんじゃねぇよ!あの試験のせいで俺たちの友達は死んだんだぞ!怪盗になんか絶対にならねぇ!」
「ならなくてよろしいのですか?怪盗になることが試験の‘脱落者’を救える唯一の手段なのですよ?」
「なに!?」
「今…」
「救えるって言ったか?」
「はい。あれは試験ですので、死ぬのではなく脱落する。つまり、不合格になる‘だけ’です」
「じゃあ、優磨は何処にいるんだ?」
「脱落した者は、感情の中で最も強い希望の光を持つ夢を必ず失います。その結果、強いマイナスな感情が生まれ、それが霧となります。
窓の外をご覧下さい。建物が歪んでいるのがお分かり頂けますよね?これは、心を模しているからなのです」
「建物が心そのものってこと?」
「そういうことです。因みにこの世界では建物のことを『コア』と言います。
あそこを見て下さい。あの黒い霧がかかっている場所全てマイナスな感情が強くなっている証拠です」
「ということは、優磨はこの霧がかかっている建物のどこかにいる、ということか?」
「その通りです。どうなさいますか?
霧は瞬く間に発生しているので、いつ見つけられるかは分かりませんが」
「それでも!」
「やるしかないよな!」
「必ず探しだそう!」
「わかりました。では、怪盗になるための準備を致しましょう」
「まずは、それぞれの心を写す『器』をこの中から直感で選んで下さい」
「それによって、このように希望の光は形を持ち、コアの霧をらすことが出来るようになります」
フェデルのしていたネックレスに付いている宝石が光を放つ
それぞれ信也は指輪、大翔はブレスレット、舞彩はブローチを選んだ
「それではエスペランサ様お願いします」
その直後、強い光と何かに引っ張られるような不思議な感覚に襲われた
「なんだ!?今の」
「成功したようですね」
見ると『器』として選んだものに独特の光が宿っていた
「君たちもこれで怪盗だ」
その言葉と同時に服装が変わる
「それが怪盗の正装です」
白を基調とした動きやすそうなものだ
「え、怪盗って黒とかじゃないの?」
「マイナスな感情は言い換えれば「闇」です。そこに長くいると我々も闇に呑まれてしまうのですが、光の象徴である白はそれに対抗出来る力を持っているんです。それでも居れる時間は限られますが」
「なるほど、服も関係するのか」
「とにかく、これで優磨を探せるな。早速行こうぜ!」
「お待ちください。まず講義と演習を行って頂く必要があります」
「そんな事してる暇ねぇよ。一刻も早く優磨を探しだしたいからな」
「気持ちはわかりますが…」
「フェデル、行かせてあげなさい」
「よろしいのですか?」
「君が付いているから大丈夫だろう。演習代わりにもちょうど良い」
「わかりました。では、エスペランサ様のご好意により今回は特例とします」
腕時計のようなものから空中にモニターが映し出された
「場所も近いですし、数値も低い。ここにしましょうか」
「あの、それは…」
「あ、すみません。まだ説明していませんでしたね」
「私たちはマイナスな感情のことを『クロ』と言っています。そして、クロの様子を知ることが出来るこの端末を『クロフ』と言います。
ここに表示されているのがクロの強さです。これは10段階で表されるもので今回行く所は3なので、それほど難しい盗みにはならないと思いますが油断は禁物ですよ」
「1つ聞いても良いか?」
「何ですか?」
「優磨を探すのに何か手がかりはあるのか?」
「そうですねぇ…。明確なものはありませんが、クロの強さはその感情が生まれる前の希望の光の強さ比例します。その方が本気で夢を追っていたのであれば、多少手がかりになるかもしれません」
「ありがとう。参考になった」
「それは良かったです」
「その他、クロフはいろいろな事が出来ますが、それは追々説明しますね」
「どうぞ」
俺たちにクロフが渡された
「では、行きましょうか」
そう言ってクロフのボタンを押すと、フェデルの服が正装に変わった
外に出るとやはりコアは歪んでいた
そして5分ほど歩くと目的の場所に着き中に入ると………
見たことないものばかりの暗く、禍々しい雰囲気に押し潰されそうだ
Re.ゲイン 月夜 美穂 @poni_8
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