第4話 最終試験・扉

しばらく沈黙が続き、大翔が口を開いた


「優磨は…」


「わかってる…間に合わなくてすまない。

やはり他の方法を考えるべきだった」


「いや、お前のせいじゃない。

俺が動けなくなったせいなんだ。アイツが爆発する少し前から急に足が‘痺れて’…俺なんか、かばわなくてよかったのに…(優磨、あの時なんて言ったんだ?)」


うつ向く大翔


「こうなったら、絶対合格して責任者ぶん殴ってやるぞ」


「俺は…もう…」


信也が大翔の胸ぐらをつかむ


「大翔、お前は優磨の気持ちを受け止めずに逃げるつもりか?」


「俺には…受け止めるなんて出来ねぇよ。お前みたいに強くねぇから」


「ふざけるな!!

俺は、人の気持ちを受け止められない奴を親友だとは絶対に思わない。

少なくともさっきまでは、困っている俺を見て背中を押す言葉をかけられる、信頼できるいつも通りのお前だった。だから、お前と優磨に囮を頼めたんだ。お前は優磨の気持ちだけじゃなく俺の気持ちまで裏切るんだな!?」


「時間になりました。

それでは最終試験開始」


「あとは自分で考えろ」


「制限時間5分か。 短いな」


ドアがどこからともなく現れ、1枚の紙が降ってきた


【一度しかドアに力を加える事は出来ません。間違えた場合、全員脱落となります】


大翔の方に紙を滑らせる


扉には「明」の文字、床の前と右には六

後ろと左には九が書かれ、4等分されている


(メイ…明かり…)


(六…九…引くのか、前後なのか…)


焦りが思考力を低下させる


「残り1分!」


「くそっ!時間が短すぎる」



「江戸の時刻だ」


小さいが確かに大翔の声が聞こえた


「江戸の時刻…そうか!」


ドアを右に引くと開いた


「どういうこと?」


「このヒント。「明」と「六・九」は江戸時代の時刻表現と同じなんだ」


「そっか!「明」につながるのは六だけで針が差したときの向きは右!」


「そういうことだ」


「ありがとう、大翔。助かった」


「礼を言うのは俺の方だ。

ありがとな。信、俺…」


「気にするな。偉そうなことを言ったが、目の前であんなことが起これば俺だって同じようになっていたと思う。かばってくれたなら尚更だ。自分を責めたくなるのもわかる。

けど、お前なら少し落ち着けば、俺の言葉を理解して、前を向いてくれると思った んだよ。あんな言い方して悪かったな」


「いや、信が本気で言ってくれたから気持ちを切り替えられた」


「そうか」


「合格おめでとうございます」


(何度目だろうな。お前の言葉に助けられたのは。)


光に包まれる


次に目を開くとそこは黄金に輝く空間だった

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