最終話   『家路につくカグラ達』

 ギルドの依頼を着々とこなし、レベリングも

 順調なカグラたち一行。

 現在のレベルは13レベル。


 引き籠り生活と、乱れた食生活によって太った体形も、

 皆元通りの健康的なスリムなプロポーションに戻っている。


 レベル1になったとはいえ、モンスターの行動パターンと

 弱点を把握しているカグラにとって、大抵のクエストは

 油断さえしない限りは苦戦はない。


 村正作の高性能防具も冒険において大いに貢献している。


 村正の防具はその基礎防御力もさることながら

 特殊効果の状態異常耐性(極大)、即死無効、

 呪術無効、継続回復(小)、のおかげで、いわゆる

 初見殺し系の敵に殺される事が無いのは大きい。


 さきほどまでカグラたち三人は、

 翼竜討伐のクエストを難なくこなし、

 現在は街までの帰路の途中である。


「そういえば、ソレイユのお姉さんはもう元の世界に戻ったの?」


「帰ったにへ。異端審問官が週一日曜日の朝に来るから、あんまりこっちに長居ができないっていってたにへ」


「週一の日曜日の朝にだけ来るとは随分と律儀な敵だな……お姉さんの方は一人で危なく無いのか? 敵は異端審問官なんだろ?」


「お姉ちゃんいわく、この世界に襲来したやつらと同名の全くの別物だそうにへ。比較的健全な攻撃しかしてこない敵で人も殺したりしないからそんなにやばくないっていってたにへぇ」


「へぇ。同名でもいろんな敵がいるんだな。まあ、『田中』という名前の人間だからって、全員同じ訳じゃないから。まあそんな物と理解すりゃいいのかな?」


「タナカ……とは何か知らないけど、きっとそんなもんにへ」


 ソレイユは、姉が返ったあとに少し寂しそうにして

 いたが、最近はかなり立ち直ってきている。


「そういや、セレネの妹さんたちはこの世界に定住する事に決めたそうだけど、その後はうまくやれてるのか? 生活面とか苦労はしてない?」


「気に懸けてくれてありがとうカグラ。仕事も見つけられたようで、生活面の苦労は無さそうデス。ワタシの千人の妹たちは、この世界の引き籠もりや、ニートの方を社会復帰させるための住み込みでの自立支援をしているそうデス」


「お前の妹たちは、働きものだなぁ。でもニートや引き籠もりだと、お給料払うだけの金ないのでは?」


「引き籠もりや、ニートの方の親から1割負担で貰っもらっているそうデス。残りの9割はギルドが支払っているそうデス」


「ギルドも9割負担するとは結構思いきったね。社会保障制度として素晴らしい試みだ。そして、彼の親はきっとお前の妹さんたちに感謝してるとおもうぜ」


「妹たちも、ご両親からの感謝の言葉が大きな励みになっているといっていまシタ。すぐに結果が出ない分だけ、なかなか大変な仕事デスが、妹たちには頑張って欲しいと思っていマス」


「そうだなぁ。まあ、すぐには無理かもだけど、話し相手が居るだけで随分と心の励みになるもんだよ。その辺りのことは俺も良く分かる。まあ、俺も転生前はまともな話し相手がいなかったからなあ……。あれは結構、辛かった。はは」


「今は、カグラにはセレネが居るデス」


「ボクも居るにへ」


 カグラは少し考えた後に、

 少し照れ臭げに、思っている事を言葉にする。


「そうだなっ! 俺は、お前たちのおかげで毎日を楽しく過ごせてるよ。それは感謝しているぜ。いつも、一緒に居てくれてありがとうな」


「うーん。……カグラにしては、捻りひねりの無い素直な返しでちょい肩透かしにへ」


「カグラ、熱でもありマスか?」


「おいおい、ひでーな。ギルドのおっちゃんが言ってたんだけどさ、自分が思っていることは、恥ずかしがらずに、できるだけ口に出した方がいいって言ってたんだよ」


「そうデスね。モンスター討伐は明日の命が保証されない危険な仕事デス。日々を悔いなく過ごすのはワタシも重要だと思いマス」


「あのおっちゃんたまに良い事をいうにへ」


「まあ、そんなわけでだ。これからも、セレネ、ソレイユ。よろしくな!」


「もちろんにへ」


「了解デス」


 カグラたち三人は、

 仲良く手を繋ぎつなぎながら、

 家路いえじへと着くのであった。






              おしまい






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最強転生者は『超』難度異世界で無双する くま猫 @lain1998

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