第8話

警告音が鳴り響いている。

赤いランプが目の前をちらちらとして。


モニターに現れている警告は、前方から向かってくる障害物を指し示していた。

僕の舟は、燃料切れを起こす前に、食糧切れを起こす前に、彗星の軌道に乗ってしまったらしい。

必死に舵を取ろうとするけれど、少ない燃料じゃ思い通りになんかならない。

まばゆい光に、目がくらんで、ぐらりと舟が揺れて。




僕を呼ぶ声が聞こえた。

愛しい、愛しい君の声。


僕の舟が光に砕かれていく。

僕の元に君が来る。


意識が遠のきそうになってふと思い出した。慌てて鞄から、君の宝物の入った小瓶を取り出す。

それを受け取ると、君は幸せそうに笑った。そうして僕を包み込んでくれた。


君はきらきらと煌めいて、輝いて、まるで随分前に見た流れ星のように。

とってもとっても、美しかったんだ。



全てが消えてしまうその刹那に、思い出したんだ。これまでのこと。

君が僕らの元に堕ちてきて、それから君を宙へと還して。

もう一度君に会いに行った僕らを、馬鹿にした大人の穢れた言葉を振り払って、僕はこの宇宙に逃げ出してきた。この銀河に逃げ出してきた。

そうして、今、穏やかに微笑む君が僕の傍にいて。



君に宛てた手紙はここで終わってしまうけれど、それでいいんだ。

僕は君に会えた、その真実で十分だったから。

その真実が、君が、僕の神様たらしめるものになるから。


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僕の銀河航海記 もちみかん @al0range

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