ヒロイン名鑑2:本宮衣織

 今回はカクヨムでの第2作目、『キリさんの左手』より本宮もとみや衣織いおりを取り上げます。


 ネーミングに関するこだわりについては館野由麻の回で述べましたが、衣織に関してはうっかり(?)素敵すぎる名前を授けてしまいました。

 本宮衣織。完璧じゃないですか? こんな名前に生まれたかった……。

 と、こんなふうに思ってしまう時点で悲しいくらいアマチュアである自分を痛感します。


 さて、わたしは現実に起こる浮気や不倫が大嫌いなのですが、なぜかそうした不実をテーマに作品を書くことが多いです。

 書くことで何かを消化しているつもりなのだろうか……自分がよくわからない。

 衣織は長いこと大学教授と不倫関係にあり、その愛情の燃えかすになんとか火を灯すような日々の中でキリさんに出会いました。

 ごくごく普通の女の子が不倫しちゃうこともあるし、ごくごく普通に生きていて変わったタイプの男性とめぐり合うこともある。

 人生とはままならないものですよね。


 衣織が住んでいるのは西武池袋線沿いの町、通っているのは都心の私大という設定なのですが、これはまんまわたし自身の大学時代を反映してしまっています。国文学科でなく英文学科だったけれど。

 ささやかなひとり暮らし。自分にとって居心地の良い空間に整えてあって、帰ってくると自分の生活のにおいにほっとして、たまにちょっと手をかけた食事を作ったら誰かに見せたくなって。

 そんな学生時代を懐かしみながら書いていました。


 キリさんには実在のモデルがいて、作品には実際のエピソードが多分に含まれています、という話はあちこちで書いたのでここではことさらに言いませんが、衣織自身の不器用さが昔の自分を見ているかのようで、読み返すと胸の奥がしくしく痛みます。教授と不倫はしていないけど(笑)。


 衣織のビジュアルイメージは、「中肉中背で肩より長めの髪」程度しか定めていませんでした。

 その分、読者の方が自分と重ね合わせることのできる余白が生まれたかなと思うのですが、もう少し身体的特徴や嗜好などを盛りこんだ方が、物語の深みが増したかもしれませんね。


 ちらっとしか出てこないけれど、衣織が卒論に取り上げたのは三島由紀夫。作者も大好きな作家です。

 三島について言及しすぎると物語が散漫になるので作中ではサラッと流しましたが、三島好きの方がいらしたらぜひ、語りたいな。

 わたし自身は英文科だったけれど日文科の友達やサークル仲間がたくさんいたので、なんとなくイメージするところは実際の雰囲気と近いんじゃないかと希望的観測で思うのですが、あんなにきれいに専攻がばらけたりはしないものかもしれません。すみません。


 よくも悪くも、衣織の平凡さ、普通っぽさには作者自身救われるところがありました。

 幸せになってほしい……って、作者が言うべきことじゃないですね。でも、きっと。

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