第4話 喋る者

自転車に乗っていると、まるで死に急いでいるかのようだった。


怖くなった達央は眠りについた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「起きろ!」

達央の声が唾を飛ばし現れた。

 

既に外に出られるような格好だったので、

西谷も今までと違ってしっかり起きた。

 

「...」

 

申し訳程度に歯を磨き、支度をすると外へ出た。

 

曇り空は気分が乗らない朝にはお似合いという感じで、2人は自転車の方までゆっくり歩いた。

 

また進む。

 

「俺は34だけど、お前は?」

達央が急に聞いたことは年齢であった。

 

「...18だけど」

 

達央は聞いても無言であった。

西谷は表情が気になったが、二人乗りの状態じゃ下手に動けない。

 

「なんで突然?もしかして合法かどうか調べたかったの?」

 

「はぁ?おまえは随分と自信があるようだが、そんなに若く見えないぞ。未成年だなんてな」

 

西谷のからかいを避けると、達央は自転車を漕ぐスピードを上げた。

 

 

 

 

いくらか時間が経つと、そこは既にK市であった。

S市ではトラッシュに会うことは何故かなかった。

自転車を放り投げたあの男がなんかやってたのだろうか。

 

達央は自転車から降りて運びながら歩いている。

 

すると、前で野良猫が3匹歩いた。

達央は確信を持って言った。

「...トラッシュか」

 

「ええ?なんで分かるの?」

 

「...さあ。本能とかじゃないか?」

 

「え...それってどういう?」

 

「...。」

 

たつおは黙りながら猫が通り過ぎたことを確認すると走った。

慌てて西谷もついて行く。

左への分かれ道に猫は行った。幸い2人が進むのは前方なのだが...

 

 

「あ」

 

2人の太った男女が前方から走ってきた。

それらの見た目からトラッシュであることは西谷にもわかった。

人間においては、変化がわかりやすい。体の色は黄色と赤が混じっている。

 

「やばい、あいつら俺らに気づいたぞ。左に逃げよう」

 

「なんで?撃てばいいじゃん!」

 

「もう弾はねえ!」

達央は西谷の腕を掴んで左に走った。

2人のトラッシュも追いかけてくる。

 

「やばいやばい...」

 

達央は前方の3匹を蹴ったり踏んだりすると進んだ。

「あそこの隙間、お前入れ!」

 

達央は一軒家と一軒家の隙間を指さした。

 

「ええ、あそこ!?」

 

「お前は細いんだから入るだろ!早くしろ!」

 

西谷は戸惑いながらもそこの隙間へ。

 

簡単に入れたが、反対側は完全に塞がっていた。

 

「どうしよう、出られない...」

 

2人のトラッシュは西谷が進んだ隙間を入ろうとしている。

「うぁ...が...す...」

 

「ちょ、キモイ...達央なにやってんだよ、早くしてよ...」

 

 

すると、車の音がした。

 

 

その後、

ガン!という音と共に女の方が倒れた。

 

奥で、スコップを持つ達央が見えた。

 

「おらこい!」

 

そして達央は走っていった。

 

男のトラッシュは達央を追う。

 

出られそうなので西谷は隙間からでた。

女のトラッシュは動かなかった。

 

車の音がまた聞こえると、

 

道路で黒い車が勢いをつけて男を轢いた。

 

バックしてぐちゃ、と踏んでから

車は西谷の方に近づいてきた。

 

 

「ふう、何とかなった」

 

「...わざわざ車使わないでスコップで殴ればよかったじゃん」

 

「それは.....元々俺は車でやるつもりだったんだよ。たまたまスコップがあっただけで」

 

「あ、そう」

 

「...そんなことより、車があったんだよ。

これですぐS市まで行けるな。」

 

 

 

そもそも、銃の弾がない時点でおかしかった。

このご時世、銃で撃ち殺すぐらい常に出来ないとまともに暮らしていけないのに。

 

2人がトラッシュにであった時はまたこのような騒ぎを起こさなければならないのだろうか。

 

 

車はさっきトラッシュがでた道を通り、広い道を進んだ。

 

 

「...でさ、結局なに?

ウチ、ずっとあんたに着いてってるけど、結局悪者で、ウチにあんなことやっちゃうためでしたーとかじゃないよね?」

 

「いいから。てかsexするならわざわざ遠く行かなくても近くでやるよな、普通」

 

「...確かに。」

 

よく分からない会話であった。

 

「じゃなくて!ほんとに教えて!教えないならこの銃であんたを撃ち殺すぞ!」

 

「だから、弾ないって言ったじゃん。あとここで撃ったら事故死するじゃん。」

 

「...確かに。」

 

 

「...もー!なんでそんなに教えたくないの?

安心して、ウチはなんも出来ない。車も運転できないし、トラッシュも殺せない。だから、大丈夫でしょ?」

 

「...」

「そうか、なら教える」

 

 

「俺は中崎達央なんだ。分かるか?」

 

「...?」

 

「いや『...?』じゃなくてさ。.....。」

 

「中崎達央だからなんなの?」

 

「はー...。日本でトラッシュ化のウィルスが広まった研究所は知ってるよな?

実は俺の父親がそこの研究所で働いてんだ」

 

「...」

 

「でな、俺は父の研究所に何度も行った。

中2ぐらいだったか、トラッシュの研究を見せてもらった。俺の家族の家はその研究所の近くだったんでな。」

 

「え!?あんたが中2って...何年前?」

 

「20年前。」

 

「トラッシュってその頃からあったの?

ウチ...あんまし覚えてないや。」

 

「トラッシュ化ウィルスが広まったのは18年前のクリスマスイブだ。お前が産まれたか産まれてないか...」

 

「ウチの誕生日は9月16日。産まれてるよ。」

 

 

 

「9月の.....そうか。

で、ウィルスが広まる2年前から、研究所ではそのウィルスの研究をしていた。」

 

「そして...初めて人間を使った研究を行った。

その人間は...俺の母だ。」

 

「え...」

 

「母は抵抗しながら注射を打たれた。俺はその現場を全て見ていた。

.....父親はとんでもないサイコパスだ。俺はその遺伝子を受けはしなかったが」

 

「そんな...でも、達央ってたしか殺人鬼なんじゃ...つまりサイコパスってことじゃ」

 

「いいや、ちがう。俺は普通の人間だ。

今、人殺しなんて絶対に嫌だからな」

 

 

 

西谷はよく分からなかった。

そんな父から育った人間で、なおかつ人を何人も殺したとなると、これは嘘にしか思えなかった。

 

達央がまた口を開いた。

 

「なあ、お前がトラッシュについてどれぐらい詳しいかは知らないが、『個人差』があるのは知ってるか?」

 

「...知らない」

 

「完全に意思を無くした、腐り切ったやつだけをトラッシュとは言わない。」

 

 

「俺も...俺も注射を打たれたさ。」

 

 

西谷はそれを聞いて、急に体が震えた。

 

「え、それって...!」

 

 

「俺もトラッシュだ。」

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ゾンビに喰われた者、トラックに轢かれた者 @buchi_fu

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