第3話 性行為と車

真実を知りに行く序章だ。

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二人が遠くから眺めていたのは、トラッシュ同士の性行為であった。

 

 

トラッシュの性行為の意義は、普通の生物と同じく子孫を残すためである。

 

しかし、トラッシュの精子は特殊であった。

 

 

受精するが、一部の精子は他の器官などへ行き、

そして頑丈にする。

 

子を安全に産むために、このような能力がトラッシュにはついた...。

 

 

しかし、とある研究者含め、様々な人間はこの都合のいい能力に疑問を持ったのであった。

一体なぜか......

 

 

 

 

 

「うわあ.....犬ってあんな激しいんだね」

 

「お前は犬のセックスを見たことがないのか?あんだけ暴れ回るのはトラッシュだけだ」

 

「セッ...って、言うな!」

 

「はあ、お前は荒い性格の癖に随分と初々しいもんだな」

 

「そんなの.....まだしたことないし!」

 

西谷は顔を少し赤らめて言う。

 

大して達央は、なんだか青ざめている。

 

 

「?どしたの?」

 

「...なんでもない。」

 

 

 

 

彼は小走りになって、二匹の犬に近づいた。

 

 

銃声がした後、西谷が覗いたのは

抱き合っている血塗れの犬だった。

 

 

そいつらを横目に、二人は歩いた。

 

 

「まだ着かないの?もう疲れたんだけど」

 

「お前なあ、まだ病院が見えるだろ?何言ってんだ」

 

病院からの道を通り、坂を下って1kmほど歩いたとこだった。

 

「こっからまだ40kmぐらいはあるな。まあ、全然近いだろう」

 

 

車がない今、ここからS市までは歩くしかない。

 

 

そう、今はS市に向かっている。

現在地はT市。K市の隣だ。

 

自転車があればいいのだが。または誰かの乗る車だ。

ここら一帯にそれらは無かった。

 

「えー、遠ぉ。」

 

 

 

 

30分後か、車の音が近づいてきた。

すでに病院は見えないとこであった。

夜なので、ライトを持って歩いている。

 

 

そういや、今は何時なんだろう。

 

 

「ねえ達央、いまなんじ?」

 

「時計の針は今5時28分を指している。だが、この時計は1年と35時間ぐらいズレてるぜ。」

 

「えー」

 

 

「んなこたどうでもいい。車の音が聞こえないのか?こっちに来てる。乗せてもらうぞ。」

 

 

そして、見えたところで道路の真ん中に立った。

 

 

 

「あのー、止まってください」

声は小さかった。

 

「ぷっ、あんた声小さ!笑うわ」

 

「うるせえ、お前が言え」

 

 

そして西谷が車に止まるよう叫ぶと、車は目の前で止まった。

 

 

 

男に交渉すると、乗せてもらえるそうだ。

しかし進行方向は逆。

 

 

 

 

 

逆に行かせてもらうよう頼むが、無駄だった。

 

 

一つの自転車を道に放り投げ、男の車は行ってしまった。

 

 

 

「あの男は道行く人間のために車から自転車を放つ趣味らしい。...糞が。」

 

「まあまあ、歩くよりはいいっしょ」

 

 

1つしか貰えなかったので、

達央は西谷も乗せ、二人乗りで動いた。

 

 

「ぐっ、なんかムズいな」

 

「二人乗りなんかしてこなかったもんねー」

 

「...二人乗りは法律違反だからな?

俺は平気で法律を破る馬鹿になるのなんかごめんだ」

 

「ふーん。でも今って法律あるの?ないでしょ?

だから今のうちに慣れといた方がいいよー、ねえ?」

 

「うるせぇ...!」

 

西谷の発言に彼はうんざりであった。

 

 

 

かなり進んだところ。

 

流石に寝ないとと思い、二人は入れる家を見つけ、そこで勝手に寝泊まりした。

 

疲れた達央はすぐにいびきをかいて寝た。

 

 

 

家の中が必ずしも安全とは言えない。

だが、みな必ず寝る。

 

今生きているトラッシュ化していない生物は、

死ぬ覚悟を決めずに寝る。

決めてしまったら、きっと寝られないだろうから。

死んだらそこまでだが、死にたいとは思わない。

 

誰もが、今持つ「生存本能」を殺したいと思っていた。

だが、このような世界になるうち、その「生存本能」が

あまり働かなくなっていった生物もいる。

 

 

西谷はしばらく寝ずに、考えていた。

 

 

...ウチはもしトラッシュに襲われたら、一思いに死にたいなあ。

 

わざわざトラッシュになんかなったら、

今までのトラッシュとの出来事は馬鹿馬鹿しくなる。

 

今あるこの現実って、死んだ後よりも地獄だったりしないかな。

そう言えばウチ、幸せだなんて、思ったこと.....

 

 

 

.....うぅん。やっぱり、幸せなんて感じたことない。

 

 



いつか、彼女も眠くなった。


あぁ、明日の朝日は何色か、確認できるかなぁ。

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