第2話 西谷夢央

2人の生き残りは、病院から外へ。

十八年前では、銃声がひとつ、ふたつ聞こえた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もちろん、周りの人間は驚いていた。

恐らく、ここまでの血の量は

まだ見た事がないんだろう。

 

 

 

...馬鹿馬鹿しい。

もう既にここまで来ているというのに。

 

S市のトラッシュの情報は

まだ伝わっていなかった。

しかし、このK市にも既に来ていたという訳だ。

 

 

そして、中崎は冷静に考え出す。

 

(おかしい、いくら犬の足が速いからって、

もうここまで来たのか?)

 

 

中崎は、動物と人間でトラッシュ化する

スピードが違う、という結論を出した。

 

 

研究所の人体実験でこのことは分かっていた。

“ウィルスによるトラッシュ化と

噛まれたことによるトラッシュ化では、

噛まれた方が何倍もトラッシュ化が早い”

 

 

 

しかし、

動物による実験はまだ行っていなかった。

 

というか、「行いたかった」のに

出来なかったのだ。

 

 

彼はそそくさ喫茶店から出ていった。

 

人らは通報するだろうが、

いまは構ってられない。

どうせ全て終わる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー現在ーーーー

 

「ウチは西谷 夢央(にしや ゆお)だ。

で、お前は?」

 

「...だから言わないと言ってるだろ」

 

「さっきウチはどうでもいいって

言ったじゃん!

.....てかもう警察機能してないし。」

 

 

男は少し口を開く。

「...達夫(たつお)」

 

 

「達夫?うーんやっぱり知らねえ...」

 

 

2人は既に外へ出ていた。

 

 

細い道、西谷と達夫が出会った場所が左に見えたが、達夫は見て見ぬ振りをした。

西谷は空をしばらく見て、

特に何も得ずに右を見た。

軽トラに気づかず。彼女にとっては都合のいいことだ。

 

 

「...で、どーすんの?」

 

「...さあな。お前が今までしてきた

ことを言ってみろよ」

 

「えーと、逃げて飯食って寝て...。」

 

こう考えると、なにもしていない。

 

「はあ。ただの寄生虫だな。こんな世の中に

なってもまだ平和ボケしてんのか?」

 

「知らねえよ!じゃあ何すりゃいいんだよ?

どうせ滅びるんだから、楽にさせろよ」

 

人間の殆どは、終わりを怖がっていた。

そんな中こんなにも能天気な女がいるとは驚きだった。

 

 

「分かった。じゃあ今からその糞みたいな生活はやめて真実を知りに行こうぜ。」

 

 

西谷は苦笑いした。

「なに、それ。厨二病?ウケる」

 

「ふざけてんじゃねえよお前。この状況で冗談言うアホがいるかオィ?」

 

「お、おー?どうしたそんなに怒って。もしかして図星だったとかー?まじ笑える」

 

達央は呆れて顔に手をつけ黙り込んだ。

 

 

 

達央が顔から手を離すと西谷の顔が

目の前に。触れそうな距離で。

達央は慌てて離れた。

 

また西谷は笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る