代表辞退

僕はアルペンスキーのプロ選手。高校1年でプロデビューし、高校2年の冬季五輪には日本代表として出場する予定だった。

僕自身が病むまでは。

契約しているスポンサーにも迷惑をかけた。

いきなり調子が狂い始めて、負けるはずのない相手に負けた。ショックだった。

原因を自分の中で探った。

だがわからない。どうしてここで躓くんだ。

更に自分を追い込んだ。


僕は日本代表を辞退した。


このままでは日本に恥をかかせるだけ。そう考えた。


周りからはもう一度考えろと言われたが僕の意思は固い。

しばらくスキーから離れた。


テレビで五輪を見る気にもなれなかった。


僕の世界から色が消えた。


僕の見ているモノはたった2色で表現されていた。


希望の光が現れない限りこの世界から抜け出すことはできない。


そう感じた。



いつもの生活がガラリと変わった。

正直暇だ。

今まではスキー場の宿舎に泊まり込んで毎日毎日日の出から日没、時にはナイターも利用して練習していたのに…

スマホの通知音が鳴る。

『どーせ暇なんでしょ?学校こいよ?』

飛鳥から連絡が来た。

そういえばしばらく学校はご無沙汰だった。

先生にも友達にもしばらく会ってないしな。

そう思い、制服に着替え家を出た。



『おい!魁斗!』

背後から女性の声が聞こえる。

でも、知り合いの声ではないような気がする。

恐る恐る振り返った。

『久しぶり!半年ぶりくらいかな?』

そこには連絡をくれた飛鳥がいた。

「飛鳥か。声じゃ誰かわからなかった」

幼馴染で比較的仲のいい僕等はいつものように会話をした。

『それ褒めてんの?それとも私のこと忘れてた?』

そーいえば飛鳥の存在はしばらく忘れてた。

今日の朝連絡があって久しぶりに思い出した。

「いろいろあったから。正直忘れてた。」

ショックで自分を責め続けていた僕はテンションも低く、調子が狂い始めたことも黙っていた。

『そっか。なるべく触れないようにするけどいつかは話してね?』

今は私のことなんてどうでもいい。

私は魁斗が五輪を辞退したことも知っていた。でも、詳しい理由は知らなかった。

「うん。飛鳥にはきちんと話す。」

僕がいつか現役復帰できた時に話そう。

そう考えた。

『じゃ学校行こ!』

私たちは学校へ向かった。

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モノクロ 加賀研治 @t_1005_h

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