第十八章 異質なダンジョン
夜通し戦った。経験値を上げながら、HPが下がるとほこらに戻り、エネルギーを満たしてからまた戦いに出るというのを繰り返した。
スライムをおえげろ、と吐き出していた姫も、キズパワーパッ〇を使っていたアスカも、若い子はええなぁと本当の母親のように見てくれていたオカンも、俺も。みんなあの時よりも凛とした表情になっていた。
外から見れば何も変わってないのかもしれない。でも中身は確実に変わっている。
強くなった。
自信がもてた。
料理のバリエーションが増えた(オカン)。
皆それぞれ力をつけて。
「行くぞ!!!」
「うおーーーーー!!!!」
俺達は本当の本当に、ほこらを後にした。
*
夜が明けたが、相変わらずの曇り空だった。
緊張しているのか、みんななにも発さない。
姫のボケも飛んでこない。飛んできたところで今はこの飛び跳ねる心臓をくっ付けている俺に言い返しも出来なさそうだが。
師長「あ、あれって……」
静まり返った中で師長の声が響いた。みんな立ち止まる。
見ると山の麓から石階段がみえた。
姫「異様な雰囲気ですわね……」
ごくり、と唾を飲み込む。
確かにそこだけ、異様だった。
誰にも入り口の事は聞いていなかったが
「ここだな……」
みんなは既に勘づいた。
石階段は奥まで続いている。一本道で、両側は陥没している。落ちれば即死?いや、木々に助けられるかな。でも遭難必至だ。
石階段は一段がとても大きく、足場も悪いため、少し登るだけでゼェゼェと息をついてしまう。ほこらでパワーを貰ったはずのみんなも、既に疲労が見え始めた。
アスカ「まだまだ始まりに過ぎないにしても、この階段は、はぁ…しんどいですね……」
オカン「もう足がパンパンや……」
勇者「みんな、弱音を吐くのはまだだ……まだいける」
姫「そうですわ、、ここまで、来たんですもの……最後まで……行きますわよ…」
途中休憩しながらも、なんとか
「ちょ、頂上だ!」
「やっとか!!!」
俺達は頂上についた。
石階段はないが、目の前には鉄で出来た大きな門があった。
姫「重そうだけど、開くのかしら……?」
師長「でもこの扉の、先だよね」
勇者「よし、みんなで押そう」
扉に構えて、一斉に押した。
-ガガガガガッ!!!
!!!
少しずらすと、扉は勝手に開いた。
扉の先は、廊下だった。鉄でできた建物のように、廊下は奥まで続いていた。
勇者「これが、ダンジョンの入り口なのか……?」
アスカ「そ、そうですね……」
勇気を出して、一歩、また一歩、中に入っていく。
中は水銀灯で照らされており、比較的明るかった。
勇者「うわっ!?」
師長「ど、どうした?」
「ろ、牢獄、鉄格子があって……屍が……」
姫「え?」
勇者の後ろを歩いていた姫がそれに気付き、悲鳴をあげそうになっている口を必死に手で抑えた。
入って右側に、鉄格子があった。仕切られていて、中に屍があった。
それがこの廊下一帯に続いていた。
師長「気味が悪いね。チビりそう……」
や、やめてくれ……それだけは……
-バタンッ!!
「ひええ!!」
俺達が入ってきた扉が閉まった。
「もう逃げられないってことか」
後戻りはできない。前に進むしかなかった。
*
奥まで進むと分岐があった。右が左か、T字路のようだ。
師長「ど、どっちだ……」
勇者「ここは……」
姫「オカン!」
オカン「んー、右や!」
オカン(お勘)を頼りに進む。鉄格子などは無くなったが、今までと一転した、この無機質な道を歩くのにはとても違和感があった。
少し進むとまたもや分岐。そのまま真っ直ぐ進むか、左に行くか。
オカン「真っ直ぐや!」
そのまま真っ直ぐ進んだのだが。
師長「ここ、さっき通ったね」
鉄格子がみえた。先程みた屍と共に。
アスカ「も、戻ってきてます」
勇者「どうなってるんだ……」
完全に迷ってしまった。これでは魔物達の思うツボだ。手のひらで転がされているようだった。
師長「私が足跡をつける呪文を唱えよう」
そうして師長は、1度歩いたところに印がつくキセーキを唱えた。
再び左に分かれ道がきたので、今度は左に行ってみることにした。
アスカ「軌跡がつくと、わかりやすいですね。無かったら今頃右往左往してますよ」
確かに。今初めて師長が役に立っているのかもしれない。
そうして軌跡を付けながら、幾多の魔物と戦い、やっとの事で、
勇者「そ、外だ!!!」
師長「ついにか!」
みんなは安堵のため息と、おおお!という歓喜の声をあげた。
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