第十章 タナカさん


アスカ「あれだけの筋肉をつけたマッフルがあんなに怯えるなんて……」


俺らはマフマフの大樹を後にして、砂漠を歩いていた。


姫「私達が行っては行けないところなんですわ」


いや、目的地だから。


「おいちゃん、どうしたんや?」

「ん、オカン、誰に話しかけてるんだ?」

「ここに人がおるで」


オカンが指をさしたところには、蹲った人がいた。

いや……こいつ「人じゃない」


「え?」


そう言った瞬間に起き上がったそれは、鋭い牙と大きな角を剥き出し、人間と魔物が融合したようなものだった。


師長「こ、こいつタナカさんだ!」


……え?


姫「し、知り合いですの?」

師長「いや、魔物の名前」

姫・勇者「ネーミングセンスを疑うわ(いますわ)」


アスカ「ま、魔物は魔物なんですよね?殺りましょう!」


アスカが言うとこわい。


姫「とにかく敵なら闘いますわよ!」

姫が剣で攻撃!タナカさんに13のダメージ!

勇者がカチカチの剣でタナカさんに26のダメージ!

オカンが背負い投げでタナカさんに37のダメージ!

タナカさんが勇者に40のダメージ!!

師長がスジャータを唱えて19のダメージ!

タナカさんを倒した!


が、倒れた瞬間に鎧や牙がボロボロ落ちて、より人間らしい姿になった。


アスカ「やっぱり人間?!」


そして腕を震わせながらなんとか起き上がったタナカさん。細身の男だった。


勇者「お前……何者だ!?」

タナカさん「……あ、タナカだ」

「それは知っている。人間なのか?」

タナカさん「僕は、、取り憑かれていたんだ……魔物に……」

師長「取り憑かれていた……?」

タナカさん「僕は隣町で社員をしていんだ」

……なんか世界観崩れそうなコメントだな。

タナカさん「でもある日、社長に命令されたんだ。モンキャへ行って示談交渉してこいって」


なんの示談交渉だよ。


タナカさん「そして、辿り着いたはいいけど、示談が成立しなくてね」

示談もくそもないと思うんだが。

タナカさん「呆気なくやられちゃったんだ、はは」


笑い事じゃないと思うんだが。


アスカ「それで、あんな姿になっていたのですね……」

大変でしたね、とアスカが傷を手当てしていた。


納得したのかその話。


勇者「あ、お前、モンキャに行ったのか!」

タナカさん「そうだけど?」

勇者「モンキャについて詳しく教えてくれないか?場所とか色々……俺達モンキャにいるボスを倒すのが目的なんだ」

タナカさん「ええ!?ほんとに?やめた方がいいよ……」


やはり聞く人みんなに止められる。


勇者「でもそれが俺達の使命なんだ。モンキャについて少しでも情報が欲しい」

タナカさん「うーん、そうだなあ、ここからまだまだ南に下らないと行けないよ。それから、フィールドからは直接モンキャには行けないんだ。入り口はダンジョンを経由しないといけない」

師長「ダンジョン?」

タナカさん「ああ。大きくて、迷路みたいだ。モンキャに行く前にダンジョンで魔物に殺られるかもしれないし、迷って一生出られなくなるかもしれない」

勇者「そのダンジョンはここからずっと南に行けばあるんだな?」

タナカさん「そうだよ。本当に行くんだね。頑張ってね。僕は会社に戻って報告書を書くよ」


……あ、うん(ツッコむのに疲れた)。

そうしてタナカさんと別れた。


そのあとはひたすら、南に歩いていった。

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