第八章 巨大イモムシパンナちゃん

朝、文鳥の囀る音と、窓から差し込む陽射しの眩しさに目が覚めた。

朝飯は宿主からおにぎりを人数分渡され、俺達は宿をあとに教会へ向かった。


アスカ「オカンが時効で生き返らなかったらどうしましょう……」

「いや、時効とかないから」


おにぎりを頬張りながら、なんとか教会に着いた。


神父「おお、勇者よ、よくぞこられました。本日はどのような用件でしょうか」

勇者「オカンを生き返らせてくれ」

神父「それでは200Bのご寄付を」


お金を渡すと、十字架マークの棺が光り、棺がパカッと開いて


「おはようさん」


と言いながらオカンが出てきた。え、そこにいたの?


姫「オカン!無事で良かったですわ!」


いや、無事というか、死んでたから、さっきまで。


神父「それでは良い旅を」

勇者「あ、ちょっと聞きたいことがあるんだ」

神父「なんでしょう。私にお答えできる事ならなんなりと」

勇者「モンスターキャッスルっていうのはどこにあるのかわかるか?」


これを神父に聞くのはどうなのかとも思ったが、神父なら何か知っているんじゃないかと思った。


神父「ああ、モンキャですか。あそこは恐ろしいところです。そしてここからはとても遠いところにあると。私はこれ以上は分かりません」


……まさか神父までモンキャ呼ばわりしてるとは思わなかった。モンキャに全て持っていかれたわ。


師長「あ、そう言えば、ここを南に行けば確かマッフルがいたような……」

アスカ「き、聞いた事あります。妖精、でしたっけ?」


少なくとも俺はそんなムキムキそうな名前の妖精は聞いたことがなかった。ネーミングセンスを疑うわ。


姫「ネーミングセンスを疑いますわね」


なんか姫と波長が合った。多分気のせいだ。

そうして村を出て南に向かっていると、目の前を何かが通過した。


勇者「おい、今何か通ったぞ」

師長「あ、パンナちゃんだ」

アスカ「え、だれ(困惑)」


轟音を立てて過ぎ去った大きな物体は、こちらには気づいていないようだ。


師長「巨大なイモムシ型の魔物だよ」

姫「え、食べれますの?」

オカン「焼いたらいけそうやで」

姫「貴重な、食料おおおおおおおお!!!」

と言うと、オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!


と叫びながらイモムシを追いかけた。


「いや、まて、俺たちじゃあんなの無理だ!」


俺の声も虚しく、空気に吸収されていく。


アスカ「本当に殺るんですか!」


いやその言い方こわい。

俺達は姫の後を追った。


「ハァ、ハァ、」

やっと追いついた頃には姫はイモムシとタイマンをとっていた。


姫「こいつ、後ろ姿は可愛かったのに顔面がやばいですわ!」


強刃な顎、こちらを睨み付けてくる眼がなんとも言えないほど気持ち悪かった。


「絶対負ける……」


俺は絶望したが、時既に遅し。お互い戦闘モードに入っている(姫のせいで)


姫「あたしから行きますわ!」


剣を取ってパンナちゃんに5のダメージ!

さらにオカンが渾身の足蹴りでパンナちゃんに15のダメージ!パンナちゃんが顎で攻撃しようとしたがスカした!!運がいい。

そして師長がスジャータ(攻撃魔法)を唱えパンナちゃんに32のダメージ!!

最後にケリをつけようと俺が"ちょっといい剣"で攻撃!のはずが!


-スカッ


見事にスカした!

姫「ダサっ」

その勢いでパンナちゃんが勇者に24のダメージ!


あ、無理死ぬ。

そこでアスカが俺に薬草を使った。俺のHPは半分ほど回復。

姫が会心の一撃を食らわせてパンナちゃんを倒した!


「……疲れた……はぁ。っ」

「良かった……倒せて……」

「勇者は何もしていませんわ」


くそっ、何も言い返せない……


姫「とりあえず、食べますの!」


姫は元気だ。


「よっしゃ、作ろかー!」


オカンも元気だ。

何もしていない俺がなぜか1番疲れている。

オカンがパンナちゃんを切りさばく間中、他の皆はぐったりしていた。


「できたでー!とりあえず、5人分!」

とりあえず5人分ってなんなんだ、と思って見てみると、5人分の量なんて、パンナちゃんの体のほんの一部分で、丸々とした巨体が横たわってした。


お皿には、大きな唐揚げがごろごろ、そしてサラダが大量に盛られていた。


「美味しそう!!!!」

「オカン、このサラダはどこで?」

「いやー、なんか食べれそうやろ?拾ってん」


道端に生えてた野草か!!大丈夫なのか!?

と言いつつも、玉ねぎ風味のドレッシングで絡められた野草達は、これ野草とは信じられない程に唐揚げに彩りを加えていた。


「いただきまーす!!!」


姫「外はカリッ中はジュワッと肉汁が広がって、ペッパーソルトが絶妙なバランスで絡み合ってますわ!」

師長「サラダはみずみずしくてサッパリしてて、ご飯の代わりをしてくれてるよ」

勇者「衣がジューシーだけどカラッと揚がってる。弾力のある歯ごたえ、いくらでもいけそうだ!」

「いやー、良かったわぁー、焼こうと思たんやけどな、ちょっとデカくて、一気に揚げることにしたんや〜」


オカンが照れながらそう言う。

アスカ「あれ、あそこに大きな木?が見えます」

師長「あ、あそこだ!マッフルがいるぞ」

勇者「じゃあ食べたらそこに行こう!」

姫「そうですわね!」


そうして皆は口いっぱいに唐揚げを頬張った。

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