第七章 宿屋の麻婆茄子

やっとのことで俺達は洞窟を抜けた。意外と短かった。


「村ってもしかしてあれのことですか?」

アスカが嬉しそうに指をさした。


師長「ああ、あれだよ、行ったことはないけどね、はは」

勇者「え、教会あんのか??」

師長「まあ、それはあるだろう」

姫「ついでに一泊しますわよ!」

師長 「ああ、宿もあるんじゃないか?」


姫はよく突拍子も無いことを言い出すが、その8割は的を射ている。


「よし、じゃあ教会でオカンを生き返らせて、宿に泊まるか!」


村はとても小さな村だった。


「たまに教会や宿屋に寄りに勇者がくるんだよー、いらっしゃい」と、村人Aが出迎えてくれた。

「よし、まずは教会に寄って」

姫「思ったのですけど、宿屋に泊まったあとの方がいいのではないかしら」


「え」


アスカ「まあ確かにオカンを生き返らせるとその分宿代もかさみますし……」

師長「ご老体だもんね」

姫「じゃ、今日のところはひとまず宿屋に向かいますの!」


……いやまてーー!


意見が一致したみたいになってるけど違うから!

てか最終的にそういうの決めるのって俺じゃないの?!え、違うの!?


てかお前らが先に宿屋に泊まりたいだけだろ!宿代なんか虫けらほどだわ!ご老体じゃないわ!現役だわ!


勇者の叫びも虚しく、一行は宿屋へと向かった。


***


アスカ「わあ、綺麗な宿」

姫「あたしお腹が空きましたの……」

とりあえず腹が減った俺達は宿の1階にある食堂に入った。


宿主「はい、麻婆茄子だ!いっぱい食えよ勇者よ!」

「わぁぁぁぁぁぁあ!!!」


大きな皿に盛られた麻婆茄子と、ご飯が運ばれてきた。食堂の照明を浴びて艶々だ。


「いただきまーす!」


姫「口に入れた瞬間にとろみが口の中を襲ってきますわ」

アスカ「ナスはみずみずしくて、噛んだ瞬間に中から水分が溢れてくる」

師長「ちょっと辛味があるけどこれが茄子やほかの野菜と絡んで最高に美味い」

勇者「ご飯は甘くて美味い、、たまんねぇ!!」

宿主「いい食いっぷりだなぁ」


その後は皆無言で平らげた。


宿主「ちょっと休憩したら、露天風呂に入ってきな」

姫「露天風呂!?」

アスカ「まさかここにきて入れるなんて思ってなかったです……!」

勇者「よし、はいるか!」


男女分かれて露天風呂へ。

引き戸を開けると夜の冷気と共に湯気が入り込む。

うっひょー!

と心の中で声を上げて、足先からゆっくりと湯に浸かる。


「おおっほぉおおおおぅ」

げ、師長がいるのに変な声を上げてしまった。


しかし-


湯に浸っていく瞬間にじわじわと体が熱くなってくる。

旅の疲れはもちろん、魔物にやられた傷も癒えてくるようなこの感覚。


夜の冷気は全て吸収され、お湯の温かさがじんわりと体に染み渡っていく。


「ああ、気持ちいい」


俺が言う前に師長が声をあげた。

その後は無言でじっくりと湯に浸かっていた。

(女風呂の方は長そうなので省略)


宿主「どうだ、風呂は?」

アスカ「とてもいい湯でした」

姫「湯加減も最高でしたわ」

宿主「そりゃよかった、あとは寝るだけだ」

アスカ「ありがとうございます」


俺は寝床へ行くと、ベッドにダイブし、そのまま寝てしまった。

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