瞢騰

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 病 中 偶 吟


 病中びやうちう偶吟ぐうぎん

殘臘ざんらう 書斎に卷帙くわんちつうづたか

瞢騰まうたうたり 橫臥わうぐわして夢に徘徊す

詩をぎて閑却するに流年りうねん逝く

大息たいそくして言無くすずりあいまか


【通釈】

歳末まで幾許いくばくか、書斎には読まねばならぬ書物の山積している。

だのにぼんやりと横になりながうつついめとを行ったり来たり。

文事よみかきして等閑なおざりにしているうちに今年は終わろうとしており、

そのことに歎息たんそくするばかりで云うべき言葉も無く、今やすずりほこりまみれだ。


【語釈】

殘臘ざんらう:歳末までの余日。旧暦十二月の異称。

卷帙くわんちつ:書籍の巻とこれを保護するために包む覆い=帙。転じて、書物。

瞢騰まうたう:ぼんやりすること。うっとりすること。

ぎて:不足して、止めて。


※韻は上平声十灰の堆・徊・埃、仄起式七言絶句。


備考備忘:


〔平字○/仄字●/平仄両用字△ 〕 

【起】○●○○●●韻

【承】●○△●●○韻

【転】●○○●○○●

【結】●●○○●●韻


病餘やみあがり、意気のいまちざるも、養痾の裡に五箇月に亘る契闊ごぶさたを謝する。

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