〔漢詩藁〕

翠琅玕

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 晩 春 偶 成


 晩春偶成

紅飛紫散こうひしさんして又闌殘らんざん

踽踽くくたり 晨遊しんいう墜歡つゐくわん惜しむ

杜宇とう一聲いつせい 凮韻ふうゐんつや

珊珊さんさんとして影るる翠琅玕すゐらうかん


【通釈】

べにゆかりの花々は損なわれて、又しても春が老いて逝く。

身独り朝の散歩をしながら、歓びの名残を惜しんでいる。

ふと、杜宇ほととぎすの啼く声、風の起つや、

爽々さわさわと、美しき若竹の林が揺れ動くよ。


【語釈】

闌殘らんざん:衰えること。春が老いること。

踽踽くくたり:独り歩くさま。

晨遊しんいう:朝の散歩。

墜歡つゐくわん:喪われた歓楽。

杜宇とう杜鵑ほととぎすの異名。

凮韻ふうゐん:風の音。また趣あること。風致。

珊珊さんさん:帯びた佩玉はいぎょくなどの鳴る音。転じて、葉音の心地よいさま。

翠琅玕すゐらうかん:宝玉のように美しい翠の竹。


※韻は上平声十四寒の殘・歡・玕、平起式七言絶句。


備考備忘:


〔平字○/仄字● 〕 

【起】○○●●●○韻

【承】●●○○●●韻

【転】●●●○○●●

【結】○○○●●○韻

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