李桃園

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 上 巳

上 巳 澆 愁 不 可 言

四 望 恍 惚 李 桃 園

隨 風 綵 蝶 過 牆 去

眼 看 菜 花 春 色 繁


 上巳じやうし

上巳じやうし澆愁けうしう言ふべからず

四望しまう恍惚くわうこつたり李桃りたうゑん

風に隨ふ綵蝶さいてう まがきを過ぎて去る

まなこには菜花さいくわへて春色しゆんしよくしげ


【通釈】

上巳じょうし、三月三日の雛祭に酒気帯ぶるは何とも云えぬ。

見廻みめぐららす四方よもに心奪わるることよ、この李桃ももの園に在ってしては。

おや、風に揺蕩たゆたう麗しき蝶が生垣を飜々ひらひらと飛び去ってく……。

転じた眼路まなじああ、何と菜花なのはなの黄の映えて春色はるいろに充ち満ちていることか!


【語釈】

上巳じやうし:桃の節句、雛祭り。

澆愁けうしう:心を宥めるために酒を飲むこと。

四望しまう:四方、周囲ぐるり

綵蝶さいてう:色鮮やかな蝶々。


※韻は上平声十三元の言・園・繁、仄起式七言絶句。


備考備忘:


〔平字○/仄字● /平仄両様字△〕 

【起】●●〇○●●韻

【承】●○〇●●△韻

【転】〇○●●△○●   

【結】●△●○〇●韻


※令和五年の上巳じょうし、雛祭に……としつつ、実はその前日に近所の公園で蝶々の飛び交うを見たに託けて。

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