蚶気絵

 しょうの笛の名器とふは、蚶気絵きさけゑ法華寺ほつけじ交丸まじりまろ白樺しらかば高市たけちの五管のことにてやあらむ。元弘元年(一三三一)蒙塵まうぢんせしみかどからめ捕られて怪しき輿こしして六波羅に移御うつりおはしまししころほひ大神おおがの景朝かげとも豊原兼秋とよはらのかぬあきもとにてぞ検知しける。これ筑前前司ちくぜんのぜんじ貞知さだともなる武士もののふの預かりしとぞ。但し、後漢蔡邕さいよう亭館ていかんたるきの竹に名を得し名笛めいてき在処ありかいまつまびらかならず。追って尋ね申すべきなりといへど憑無たのみなきかと云々うんぬん。今や澆季ぎやうきみやび流石さすがに得難きものならん。莫言いふなかれ。


参考:

『花園天皇宸記』元弘元年十月十九日条(史料纂集)

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