青洗い
安良巻祐介
珍しいフクロ冠の染色個体を探しに、先週から青洗いの山脈に出かけている甥っ子から不意に連絡が入った。腰のポケットに突っこんでいた携帯電信壜の口が、甲高い、調子の外れた甥の声で急に喋り出したのだ。
「あおまでも、うらめくようにもれゆくや、あおやあがらや、いまわのひかり。さんだらめくは、いいしれず、しずるそうべの、そとばをかぶき。ようにしすらば、あおあらい、かわべのあたま、えどのくるまで」
何を言っているのだか、何一つ分からなかった。ただ、甥はもう帰って来ないのだなということを、何とはなく、どうしようもなく直感したのであった。
青洗い 安良巻祐介 @aramaki88
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